ラベル 診療報酬改定 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 診療報酬改定 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

11/05/2026

財政審が示す社会保障改革と薬局の未来 第2部 積極財政なのに薬局には逆風? ――高市・片山体制と、財政審の提言を動かす政治の力

 財政審が示す社会保障改革と薬局の未来 第2部

積極財政なのに薬局には逆風?

――高市・片山体制と、財政審の提言を動かす政治の力

はじめに|「積極財政なら医療費削減は弱まる」は本当か

高市政権が積極財政を掲げるなら、医療費削減を求める財務省の圧力は弱まるのではないか。そんな見方もある。しかし私は、むしろ逆の可能性を考えている。成長投資を重視するからこそ、政策効果が乏しいと判断された支出や、効率化の余地があるとみなされた分野に対して、選択的で強い見直しが進むのではないか。

ここで注意したい。「財務省が無駄と考えるもの」と「地域医療にとって不要なもの」は同じではない。小さな薬局が多いことは財政上の非効率に見えるかもしれないが、患者の移動や服薬支援を考えれば必要な店舗もある。政策の評価軸が違えば、結論も違う。だからこそ財政審の資料だけを読んで次の改定を決めつけることはできない。見るべきなのは、提言を採用するかどうかを決める政治の側である。

1|財政審は政策決定機関ではない。それでも無視できない理由

▶図5:財政審の提言は、どう制度になる?

財政制度等審議会は、財政の持続可能性や予算の効率性を重視して提言をまとめる。診療報酬や医療制度は、厚生労働省、社会保障審議会、中医協、与党、国会、医療関係団体、保険者、患者などの議論と調整を経て形になる。財政審の要求がそのまま制度になるという前提は、そもそも正しくない。

それでは、なぜ毎回その資料を気にするのか。過去に実現しなかった要求が消えず、形を変えて次の改定に現れる場合があるからだ。診療所の報酬適正化、リフィル処方箋、生活習慣病管理の見直し、薬局の立地依存への評価など、論点は一度の改定で完結しない。提言、部分的な制度化、効果検証、追加の要求という循環が見られる。これを「財務省がすべてを決めた」と説明するのは間違いだが、「財務省が言っているだけ」と片づけるのも、政策の流れを見落とす。

財政審の提言には、政治的な抵抗や現場への影響を踏まえて採用されないものもある。重要なのは、採用・不採用の二択ではない。どの論点が残り、どの論点が修正され、どの条件が整うと前へ進むのか。その比較こそが、将来を読む材料になる。

2|医師会が反対してきた制度は、なぜ現実になったのか

▶図6:医療制度は一度では変わらない

医療政策では、医師会をはじめとする職能団体の意見が大きな意味を持ってきた。医療安全、診療現場の実態、患者への影響を踏まえた慎重論には正当な理由もある。一方で、医療機関の収益構造や既存の診療慣行を守る働きかけがあったことも、政策を考える際には無視できない。

ここ数回の改定を振り返ると、かつて導入が難しいと考えられていた制度が実際に始まっている。代表例が2022年度改定のリフィル処方箋だ。制度化は実現したが、普及は別問題であり、医師の処方判断、患者の理解、薬局の対応などによって利用状況は左右される。「制度ができた」と「現場が変わった」を区別しなければならない。それでも、導入の可否をめぐる議論が、制度の運用方法をめぐる議論へ移ったことは大きい。

2024年度には、高血圧症、糖尿病、脂質異常症が特定疾患療養管理料の対象から外れ、生活習慣病管理料の体系が再編された。一般的な処方箋料も68点から60点へ引き下げられた。オンライン資格確認や医療DXの整備も進み、電子カルテ情報の標準化が政策課題となった。すべてが財政審の要求どおりに実現したわけではないし、医師会が一貫して全項目に反対したと断定できるわけでもない。しかし、従来の診療所経営の前提が少しずつ書き換えられてきたことは確かだ。

「医学管理料は守られる」「頻回の通院と処方箋発行は続く」「DXへの対応は任意のままだろう」。そうした前提に頼った経営判断は、制度が変われば成立しなくなる。政策の影響は、改定率のプラス・マイナスだけでは測れないのである。

3|政治団体の影響力は、どう変化しているのか

医師会と自民党の関係は、長く医療政策を理解するうえで重要な要素だった。政治団体の資金面での支援、選挙協力、政策要望、現場の専門情報の提供など、働きかけにはさまざまな形がある。しかし、政治資金をめぐる規制や社会的な監視が強まる中で、従来と同じ方法で政策を抑止できるのか、という疑問は生じる。

私は、政治資金の変化だけで医師会の影響力が何割低下したと示せるとは考えていない。政策形成の舞台裏は数字だけでは分からず、政治団体の力を献金額だけで測ることもできない。ここでは、従来の抑止力が相対的に弱まっている可能性を、一つの政治的背景として位置づけたい。決定的な証拠がないからといって、制度の変化を読む際に政治的な力関係を無視するのも適切ではない。

ただし、医療団体の意見が反映されにくくなることが、必ずしも望ましいとは限らない。財政効率を重視する改革が患者の受診機会や地域の医療供給を損なう場合には、現場の意見による修正が不可欠だからだ。重要なのは「誰が勝ったか」ではなく、どの政策目的が優先され、何が後回しにされたかを見ることである。

4|高市・片山体制で、財政省の提案はどう扱われるのか

私が注目しているのは、積極財政を進める政権が、すべての歳出を拡大するわけではないという点だ。成長分野への投資、医療人材の賃上げ、病院経営の支援、医療DXの推進には財源が必要になる。一方で、保険料負担や財政の持続可能性も政治課題であり続ける。この両方を進めるなら、費用対効果が低いと判断された支出の見直しが強まるというシナリオは十分に考えられる。

2026年7月には財務省幹部人事が行われ、金融庁の組織再編も公表された。行政組織の変化を、政権の政策運営の文脈で見ることはできる。ただし、人事の目的が薬局や診療所の報酬削減にあったと証明されたわけではない。片山財務大臣の経歴から個々の医療政策の決定を推定することも避けたい。重要なのは人事の裏側を断定することではなく、政権が財政審のどの提案を政策として選ぶかだ。

ここで私の仮説は明確である。成長投資のために、従来の財政審が繰り返し求めてきた「比較的効果が期待できる適正化策」が選択的に採用される可能性がある。薬局の密集への減算、診療所の管理料の要件見直し、長期処方の促進、医薬品給付の見直しなどは、財政効率の論理と結びつきやすい。ただし、患者負担の増加や地域医療の縮小を伴う改革には政治的な反発も起こり得る。だから、すべてが一方向に進むわけではない。

5|「病院を支える」ことと「薬局を厳しく評価する」ことは両立する

医療政策を病院対薬局、医師対薬剤師の対立で捉えるべきではない。それでも予算配分には優先順位がある。病院の人材不足や物価高への対応を手厚くしようとすれば、別の領域で効率化を求める議論が生まれる。財政当局が薬局の小規模分散や立地依存を問題視するのは、こうした資源配分の議論とも接続している。

しかし、薬局の報酬を削れば自動的に病院の薬剤師が増えるわけではない。勤務地、給与、勤務時間、専門性、教育環境など、薬剤師の就業選択には複数の要因がある。小規模薬局を集約しても、地域の患者が薬を受け取れなくなれば社会的な費用は増える。政策が効率的に見えても、現場で新たな負担を生む可能性は検証しなければならない。

ここが薬局業界の説明責任でもある。単に「減算は困る」と主張するだけでは、財政論に対抗しにくい。薬局が処方の適正化、重複投薬の防止、在宅患者の支援、医薬品供給の安定化にどのように貢献しているか。その実績を示せなければ、財政上の非効率という評価に押し切られる恐れがある。

6|2028年度改定をどう読むべきか

私は、次回改定の点数を予言したいわけではない。見るべきは、財政審の提言が政府方針に入り、厚労省の制度設計に移り、中医協で具体的な評価項目になるまでの経路である。提言の段階では幅広い選択肢が並んでいても、政策化の過程で対象や経過措置が限定されることがある。逆に、限定的に始まった制度が、効果不足を理由に拡大されることもある。

ここで、もう一つ見落とせないのが患者負担の問題である。OTC類似薬の保険給付、長期収載品の選定療養、高齢者の窓口負担といった議論は、財政効率だけでなく受診行動や服薬継続にも影響し得る。患者の自己負担が増えれば、薬局の窓口で説明する時間や、医師への問い合わせも増えるかもしれない。制度改正の財政効果が大きく見えても、患者の受診控えや治療中断が起きれば、別の医療費を生む可能性もある。薬局の経営者は、削減される報酬だけでなく、制度変更に伴う現場負担と患者への影響を見ておく必要がある。

薬局経営者は、改定直前の答申だけを追うのでは遅い。財政審、骨太方針、厚労省の検討会、中医協で、同じ言葉がどう変化しているかを見たい。「小規模分散」「立地依存」「対人機能」「医療人材の最適配分」。これらの言葉が、いつ政策目標から具体的な算定要件へ変わるのかが重要だ。

原案の論拠と考察を深める

【原案の核心を復元】積極財政と歳出適正化は、むしろ両立する

私は、積極財政を掲げる政権なら薬局への減算圧力が弱まる、という期待には慎重だ。成長投資や医療人材の処遇改善を進めるほど、限られた財源をどこに重点配分するかという選択が厳しくなる。ここで財政審の提言が、政府の政策目標と整合する部分だけ採用される可能性がある。全ての医療費を一律に削るという話ではない。必要性の高い医療への投資と、立地依存・重複投資・給付範囲の見直しが同時に進む、というのが私の見立てだ。これは政権がその方針を決定したという意味ではなく、政策の組合せから考えた仮説である。

「提言が通った」だけでは政治は説明できない

財政審は政策決定機関ではない。厚生労働省は医療提供体制や安全性を考え、医師会・薬剤師会などの団体は現場の実態と利害を伝え、与党と政権は選挙や財政、国民生活への影響を勘案する。過去の改定で財政審が要求した内容の一部が制度に現れたとしても、それだけで財政審が勝ったと結論づけることはできない。むしろ重要なのは、以前は政治的に実現しにくかった選択肢が、どの条件の変化によって制度化されるようになったのかという問いだ。

医師会との力関係をどう読むか

医師会と自民党の関係は、長く医療政策を考えるうえで無視できない要素だった。政治資金をめぐる制度や世論の変化によって、政治団体の圧力が以前ほど働かなくなっているのではないか。私はそう感じている。ただし、政治資金の変化が個々の診療報酬改定を直接生んだと示す証拠はない。ここはあくまで政策環境に関する著者の観察として置く。一方、リフィル処方箋が2022年度に制度化され、2024年度には生活習慣病管理料の体系が再編され、院外処方箋料が引き下げられたことは制度上の事実である。実現した制度と、その政治的な原因は分けて論じる。

財務省人事が示すもの、示さないもの

2026年夏の財務省幹部人事や金融行政の組織再編は、政権による行政運営を考える材料になる。片山財務大臣が予算編成や歳出の重点化を重視していることも、政策の文脈として見ておきたい。しかし、人事異動だけで「医療費削減方針への転換が命じられた」と結論することはできない。私が注目するのは、人物評価ではなく、予算の重点配分と社会保障改革を一体として進める政策環境である。今後の予算案、政府方針、厚労省の制度設計、中医協の議論がどこで接続するかを追うべきだ。

医療費適正化は、薬局だけの問題ではない

薬局の立地依存減算、診療所の管理料見直し、長期処方やリフィルの普及、医療DXによる事務の標準化は、別々の話に見えて同じ方向を向くことがある。医療資源の配分と患者の受診行動を変えるという方向だ。ただし、DXは安全性や利便性の向上が目的でもあり、単純な人員削減策と決めつけてはならない。記事で強調したいのは、個別の点数改定を読むだけでは足りず、財源・政治・医療提供体制という三つの層を重ねて見なければ、薬局経営の変化を読み違えるということだ。

【筆者の私見】財務省が強くなったのではなく、政治の受け止め方が変わるのではないか

私の問題意識は、財政審の提言が突然過激になったということではない。財政審は以前から厳しいことを言ってきた。それを政治がどこまで受け入れ、どこで抑えてきたかが重要だった。いま私が感じているのは、成長投資と社会保障改革を同時に進めようとする政権の下で、財政審の提言を採用する条件が変化しているのではないかということだ。

これは事実の断定ではなく、過去の改定と現在の政治環境を重ねて考えた仮説である。しかし、薬局にとっては検討に値する仮説だと思う。「積極財政だから薬局は安心」と考えるのではなく、何に投資し、何を効率化する政権なのかを見極めたい。財政審を読むとは、未来を決めつけることではない。政治が選び得る改革の候補を、早い段階で知ることなのである。

参考資料

財務省「財政制度分科会(2026年11月4日)社会保障」(添付資料)

厚生労働省「2022・2024・2026年度診療報酬改定資料」

金融庁「2026年7月31日 片山財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見」


👉【note版】:財政審が示す社会保障改革と薬局の未来 第2部 積極財政なのに、薬局には逆風?https://note.com/kij_imai/n/na4a8c89ddd33

11/03/2026

処方箋料は、もう役目を終えたのか?――開業医が「院内処方回帰」を考え始めた理由 医療機関の「院内処方回帰」|第1部

 処方箋料は、もう役目を終えたのか?――開業医が「院内処方回帰」を考え始めた理由

医療機関の「院内処方回帰」|第1部

情報時点:2026年11月2日

はじめに|「また院内で薬を出そうかな」

ある開業医の知人との話から、今回のテーマが生まれました。スタッフの賃上げ、医療材料の値上がり、診療報酬改定への対応。その医師が特に心配していたのは処方箋料の将来でした。

2024年度の診療報酬改定では、通常の処方箋料が68点から60点に引き下げられました。2026年度改定で60点は据え置かれましたが、処方箋に付く一般名処方加算は2点ずつ引き下げられました。さらに財務省は、医薬分業が十分に進んだことを踏まえ、処方箋料を院内処方の処方料と同程度の水準にすべきだと提案してきました。

「これから、もっと下げられるんじゃないかな」「それなら、また院内処方に戻したほうがいいのかな?」

この話から考えたのは、院内処方と院外処方の損得だけではありません。処方箋料という政策的な評価が変わろうとしている今、診療所は何を経営の中心に据えるべきなのでしょうか。

1.医薬分業は診療報酬によって後押しされてきた

医薬分業には、医師が診断・治療を担い、薬剤師が処方内容を確認して調剤や服薬支援を行うことで、薬物療法の安全性と質を高める目的があります。一方、その普及には経済的な政策誘導もありました。かつて医療機関には薬価差益があり、院外処方への移行は医薬品の仕入れや調剤だけでなく収益構造の変更を意味しました。院外処方を評価する処方箋料の設定・引上げは、医薬分業を進める政策的な手段として用いられてきました。

2.財務省の指摘――普及のための評価はいつまで必要か

財務省の2025年4月の財政制度等審議会資料は、医薬分業の進展を踏まえて処方箋料の政策的意義を再検討する方向性を示しています。同年11月には院外処方の処方箋料を院内処方の処方料と同程度の水準にするという提案も示されました。この提案は2026年度改定では採られず、通常の処方箋料は60点に据え置かれました。一方、一般名処方加算は加算1が10点→8点、加算2が8点→6点に引き下げられています。ただし、財務省の提案は、決定された診療報酬改定と同じではありません。医療機関の経営者は、確定した制度と将来の政策リスクを区別する必要があります。

【図1:財務省原資料をここに差し込む】2025年4月23日 財政制度等審議会資料「改革の方向性(案)」該当ページ。出典:https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20250423/01.pdf

3.2024年度改定の8点引下げは何を意味するのか

通常の処方箋料68点から60点への引下げを、月1,000回算定する診療所に当てはめると、8点×10円×1,000回=月8万円、年96万円の減収相当です。これは処方箋料本体だけを取り出した単純試算であり、加算、患者数、診療報酬全体の増減は含みません。2024年度には生活習慣病管理料の再編があり、2026年度にも管理の評価・要件の見直しが行われました。制度改定による影響は個別に異なり、診療所が一律に減益だとは言えません。

【将来の仮定試算】

仮に通常の処方箋料が60点から42点に引き下げられた場合、差は18点です。月1,000回の算定なら、18点×10円×1,000回=月18万円、年間216万円の減収相当になります。これは財務省の提案をもとにした仮定であり、2026年度改定で42点への引下げが決定したという意味ではありません。実際の経営影響は患者数、加算、診療体制などによって変わります。

※月1,000回、月18万円、年216万円。制度決定ではない

4.院内処方に戻せば経営は改善するのか

院内処方が合理的な診療所もあるでしょう。患者が一か所で薬を受け取れる利便性もあります。一方、仕入れ、保管、在庫、調剤、交付、服薬説明、人員、期限切れ廃棄、供給不安、医療安全への対応が必要です。処方箋料と処方料の点数差だけで採算性は判断できません。未確定の将来不安だけを理由に経営構造を急いで変更することは避けたいものです。

5.診療所経営の本当の課題は処方箋料だけではない

高血圧、糖尿病、脂質異常症などの治療は、薬を処方して終わるものではありません。患者が自分の病気を理解し、必要な検査や診療を受け、生活習慣を見直し、治療を続けることが重要です。診療所が患者の状態を継続的に把握し、必要な医学管理を行うことは、制度の細部が変わっても大切な役割です。そこで私は、予防から治療、継続管理までの患者との関係に注目したいと思います。

6.予防医療から始まる新しい経営方針

地域の健康フェアや健康相談を通じ、住民が血圧や体重、健診結果に関心を持つ。必要な人には健診や適切な受診を勧め、診療所で診断や治療を受けた後も継続管理につなげる。その入口や情報共有の手段としてPHR(Personal Health Record)が考えられます。家庭血圧、体重、健診結果、服薬状況を本人が把握し、本人の意思と同意を尊重して必要な情報を医療者と共有する。測定方法やデータの正確性、情報管理の確認は不可欠です。PHRが電子カルテと自動連携するとは限りません。健康フェアやPHR利用だけで生活習慣病管理料を算定できるわけでもありません。

※著者の戦略提案であり政策決定ではない

7.薬局との連携は経営資源になり得るか

診療所は診察や治療方針の決定を担い、薬局は服薬状況、残薬、副作用の疑い、日常生活での困りごとを把握する機会があります。必要な情報が医師に伝われば診療に役立つ可能性があります。薬局による健康啓発や健診受診勧奨も地域の健康支援につながり得ます。ただし、連携は特定薬局への患者誘導を目的とするものではありません。患者の医療機関・薬局選択の自由を尊重することが前提です。

8.私見|処方箋料を守る経営から継続管理を強みにする経営へ

院内処方への回帰は経営上の選択肢の一つです。しかし、私が提案したいのは、予防から始まり、必要な診療、生活習慣病の継続管理、重症化予防へとつながる医療を診療所の経営方針として考えることです。健康フェアやPHRを単独の収益事業として捉えるのではありません。地域住民が健康に関心を持ち、医療者と長く関わる仕組みを、経営の基盤として育てるという思想です。収益改善が実証されたという主張ではありません。「これから、この診療所は地域の患者とどのような関係を築くのか」。その問いを大切にしたいと思います。

おわりに|この話を薬局経営者に伝えたら

「門前の先生が院内処方に戻したら、うちの薬局はどうなるんですか?」。次回は、この不安を入口に、門前薬局の立地と専門性を予防医療や継続管理に生かす可能性を考えます。

参考資料

厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html

厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

財務省「財政制度等審議会資料」(2025年4月23日) https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20250423/01.pdf

財務省 財政制度分科会資料「社会保障①」(2025年11月5日) https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20251105/03.pdf

 

👉【note版】:医療機関の「院内処方回帰」|第1部 「また院内で薬を出そうかな」――開業医が考え始めた、診療所経営の次の一手


薬剤師の退職から考える薬局経営 ──倒産最多と報酬改定の時代に、人材で勝つ構造のつくり方 薬剤師の退職事情 <後編>

 薬剤師の退職から考える薬局経営 ── 倒産最多と報酬改定の時代に、人材で勝つ構造のつくり方 薬剤師の退職事情 <後編> 2025 年の調剤薬局業界には、二つのショックがありました。 一つは倒産件数です。東京商工リサーチによると、 2025 年に倒産した調剤薬...