4/27/2026

欧州薬局サービスの現状と課題

 欧州薬局サービスの現状と課題

欧州におけるコミュニティファーマシーサービスの進展と実態調査

Evolution of community pharmacy services in the European Union and beyond: a cross‑country survey of 33 national pharmacy

International Journal of Clinical Pharmacy(Published online:15 April 2026)

 

2025年時点における欧州のコミュニティファーマシー(地域薬局)サービスの進展、公的償還(報酬)、および規制上の実態を調査した研究報告がなされています。

2020年のコロナパンデミック以降かなり薬局の機能やサービスが拡大していることが示され、社会インフラとして薬局が重要な施設になりつつあることがわかります。そして、日本の薬局の将来必要となる保険内・保険外サービスの参考になるのではと思います。


調査の概要

本研究は、2020年(パンデミック前)の調査結果と2025年のデータを比較し、欧州における薬局サービスの変遷を明らかにすることを目的としています 。

  • 対象国: EU加盟27カ国および近隣6カ国(計33カ国) 。
  • 方法: 検証済みの調査票を用い、47項目のコミュニティファーマシーサービス(CPS)の実施レベルと償還状況を調査 。
  • 背景: 医療資源の制約や人口高齢化の中、アクセスの良い薬局を公衆衛生の拠点として活用する動きが加速しています 。

ⅰ 主な結果と傾向

1. サービスの拡大

欧州全体で、薬局が提供するサービスの種類と地理的な広がりが大幅に増加しました。

  • 実施数: 1カ国あたりのサービス提供数の中央値は26項目(範囲:9〜43)でした 。
  • 成長率: 2020年と比較可能なサービスのうち、77%(36項目)が提供国数を増やしています 。
  • 顕著な伸び: 特に以下のサービスで大きな成長が見られました 。
    • ワクチン接種: 10カ国 → 19カ国
    • 薬剤調整(Medication Reconciliation): 7カ国 → 15カ国
    • 初回調剤介入(First-time dispensing): 11カ国 → 16カ国

2. 公的償還(報酬)の進展

サービスへの持続可能な資金提供についても改善が見られます。

  • 償還の増加: 全サービスの49%(23項目)で公的償還を行う国が増加しました 。
  • 主な増加項目: ワクチン接種(+5カ国)、スクリーニング(+4カ国)、一包化などの服用補助(+3カ国) 。

3. 実装における障壁

進展の一方で、依然として以下のような課題が報告されています 。

  • 規制の制限: 47サービス中22サービスで、薬剤師の能力を十分に発揮することを妨げる規制が存在しています 。
  • リソース不足: 過重な業務、スタッフ不足、高い事務的負担が新たなサービス導入の妨げとなっています 。
  • 多職種連携: 他の医療従事者との統合や協力体制が不十分なケースも見られます 。

 


ⅱ 欧州各国の薬局サービスの特徴

この研究では、欧州33カ国(EU27カ国+近隣6カ国)を対象に、47項目のサービスを調査しています 。全体として、薬剤師の役割が単なる「調剤」から、予防・臨床・ケースマネジメントへと劇的に拡大しているのが最大の特徴です 。

1. 国別の実装状況

薬局が提供するサービス数には国によって大きな幅があります 。

  • 先進的な国(サービス数が多い): フランス(43項目)、アイルランド(38項目)、ポルトガル(37項目)、イタリア(35項目)などが挙げられ、非常に多機能な薬局運営が行われています 。
  • 発展途上の国(サービス数が少ない): リトアニア(9項目)、キプロス(13項目)、ブルガリア(13項目)などは、依然として伝統的な調剤業務が中心です 。
  • 全体の中央値: 1カ国あたり26項目のサービスが提供されています 。

2. 主要なサービスの進展(2020年比)

2020年と比較して、特に以下の3分野で顕著な成長が見られました 。

  • ワクチン接種: 10カ国から19カ国へとほぼ倍増しました 。パンデミックを機に、公衆衛生の拠点としての認知が高まったことが背景にあります 。
  • 薬剤調整(Medication Reconciliation): 7カ国から15カ国へ拡大 。入退院時などの移行期における薬の重複や誤用を防ぐ役割が強化されています 。
  • 初回調剤介入: 11カ国から16カ国へ増加 。新しい薬を飲み始める患者に対し、アドヒアランス(服薬維持)向上のための構造的なカウンセリングを行います 。

 


ⅲ 日本の薬局との機能・役割の相違点

欧州の最新データと日本の現状を比較すると、以下の3つの大きな相違点が浮かび上がります。

① 臨床業務の範囲(特にワクチンと処方権)

  • 欧州: 多くの国で薬剤師によるワクチン接種が標準化され、一部の国では**処方更新(Repeat dispensing)や、軽度疾患に対する独自の処方・選定(Common Ailment Management)**が認められています 。
  • 日本: 薬局でのワクチン接種は原則認められておらず、処方箋に基づく調剤が厳格に守られています。軽度疾患への対応(セルフメディケーション支援)は推奨されていますが、欧州のような「処方権の共有」に近いモデルは限定的です。

② 公的償還(報酬)の対象

  • 欧州: サービスの49%で公的報酬が増加しており、特に「予防(ワクチン、スクリーニング)」や「管理(一包化、薬剤レビュー)」への支払いが強化されています 。
  • 日本: 「地域薬局基本料」や「服薬管理指導料」など、対人業務への評価は進んでいますが、欧州ほど「疾患予防(ワクチン、疾患スクリーニング)」に対する薬局報酬が確立されているわけではありません。

③ デジタル・多職種連携

  • 欧州: 患者の電子健康記録(EHR)へのアクセスを認める国が増えており(6カ国で実施、一部で報酬あり)、医師との「品質サークル(Quality Circles)」を通じた連携も進んでいます 。
  • 日本: 電子処方箋やマイナ保険証の活用が進みつつありますが、医師とリアルタイムで臨床データを共有し、意思決定に深く関与するレベルには、まだ地域差や制度的ハードルが残っています。

比較表

機能・役割

欧州(進展国)の状況

日本の状況

ワクチン接種

19カ国で実施。薬剤師が直接接種

原則実施不可(一部の自治体等の例外除く)

処方権の柔軟性

24カ国でリピート処方、30カ国で代替調剤

リフィル処方箋の導入が始まった段階

疾患管理

24カ国で慢性疾患管理プログラムを実施

特定の指導料はあるが、包括的プログラムは途上

報酬体系

サービス単位の公的償還が急速に拡大

調剤報酬点数に基づき、対人業務評価へシフト中

論文の結論的示唆: 欧州では薬剤師を「薬の供給者」から、医療システムを支える「ケアの提供者」へと再定義する動きが加速しています 。

 


ⅳ 公的報酬に至る条件や要因

欧州においてコミュニティファーマシー(地域薬局)サービスが公的報酬(リインバースメント)を得るための、あるいは持続的な報酬体系を構築するための主な「条件」や「要因」として、以下の4つのポイントが挙げられています。

1. 法的・規制上の枠組み(Supportive Regulatory Frameworks)

サービスに対して報酬が支払われるための最も基本的な条件は、薬剤師がそのサービスを提供することを認める適切な法的権限があることです。

  • 医療提供者としての地位: 薬剤師が「医療提供者(Healthcare Provider)」または「医療スペシャリスト」として正式に法で分類されている必要があります 。
  • 業務範囲の拡大: ワクチン接種や処方更新、代替調剤など、従来の「調剤」を超えた臨床的役割を果たすための法改正が前提となります 。
  • 実施規則の整備: 単に法律でサービスが認められているだけでなく、具体的な実施規則や報酬の定義が整っていることが、実際の支払いには不可欠です 。

2. 臨床的・経済的エビデンス(Clinical and Cost-Effectiveness)

政府や支払者が報酬を正当化するためには、そのサービスが健康アウトカムを改善し、医療コストを削減するという証拠が必要です。

  • 費用対効果の証明: 多くの国で、薬局サービスがプライマリ・ケアへの負担を減らし、医療システム全体の予算にプラスの影響を与えることが経済評価によって示されています 。
  • 具体的な成功事例: 英国の「新規医薬品サービス(NMS)」や、ウェールズの「喉の痛みに対する検査・治療サービス」のように、QALY(質調整生存年)当たりのコスト削減効果が示されたサービスは、公的報酬の対象となりやすい傾向があります 。

3. 公衆衛生上の必要性と政策との整合性

政府の公衆衛生政策(パンデミック対応、高齢化対策など)とサービスの目的が一致していることが、報酬化を後押しします。

  • アクセスの向上: 地理的な広がりや長い営業時間を持つ薬局を、ワクチン接種やスクリーニングの拠点として活用するという政策的判断が、公的資金投入の引き金となります 。
  • プライマリ・ケアのレジリエンス: 医師不足や医療資源の制約に対応するため、薬局を「コミュニティ・ヘルスハブ」として統合する動きが報酬化を加速させています 。

4. 構造的・運用の準備(Structural and Operational Readiness)

サービスを持続可能かつ高品質に提供するための環境整備も条件の一つです。

  • デジタル化とデータ共有: 電子健康記録(EHR)へのアクセスや、データの電子共有が可能な体制が整っていることが、ケアの継続性を担保し、報酬モデルを構築する鍵となります 。
  • 多職種連携: 医師や他の医療従事者との「品質サークル(Quality Circles)」や統合されたケアパス(診療経路)への参加が求められます 。

まとめ

論文は、単にサービスを導入する(地名的な利用可能性を広げる)だけでは不十分であり、「規制の整合性」と「構造的な公的報酬モデル」のセットが、薬剤師の役割を「薬の供給」から「ケアの提供」へと転換させるための必須条件であると結論付けています

 


ⅴ 日本での機能拡大のためには

欧州33カ国を対象とした最新の調査結果(2025年時点)の報告から、日本において薬局の機能をさらに拡大していくためには、以下の5つが重要なカギとなりそうです。


1. 臨床業務の法的拡大(Scope of Practice)

欧州では、薬剤師の役割が従来の「調剤」から「ケアの提供者」へと明確にシフトしています 。

  • ワクチン接種の解禁と標準化: 欧州ではパンデミックを経て、薬剤師による接種実施国が19カ国に倍増しました 。日本でもアクセスの良さを活かし、公衆衛生の拠点として接種権限を段階的に付与することが有効です。
  • 軽度疾患管理(Common Ailment Management): 欧州の9カ国で導入されているように、軽度の症状に対して薬剤師が一定の判断で処方・選定を行う仕組みを整備し、プライマリ・ケアの負担を軽減します 。
  • 薬剤調整(Medication Reconciliation)業務の強化: 入退院時などの移行期における薬学的管理を法的に位置づけ、欧州(15カ国で実施)と同様に患者の安全性を確保します 。

2. 持続可能な公的報酬モデルへの転換

サービスの拡大には、単なる「対物」から「対人・アウトカム」への評価の移行が不可欠です。

  • 予防・管理サービスへのリインバースメント: 欧州ではサービスの約半数で公的報酬が増加しています 。特に、ワクチン接種、スクリーニング、一包化(服用補助)などの「予防とアドヒアランス維持」に対する明確な点数化が必要です 。
  • 「初回調剤介入」の評価: 新規薬剤の服用開始時における指導(欧州16カ国で実施)を構造化し、アドヒアランス向上による長期的な医療費抑制効果を報酬に反映させます 。

3. デジタルヘルスの統合とデータ活用

欧州ではデジタル変革が薬局サービスの質を支える鍵となっています 。

  • 電子健康記録(EHR)へのアクセス権限: 欧州の先進事例に倣い、薬剤師が患者の臨床データ(検査値等)にアクセスできる環境を整備することで、より安全で正確な臨床判断を可能にします 。
  • 成果(アウトカム)の可視化: 薬局での介入がどのように入院率や医療費を削減したか、OECD指標のような共通の評価尺度を導入し、エビデンスに基づく政策立案を推進します 。

4. 多職種連携と地域ケアへの統合

薬局を孤立した店舗ではなく、地域医療システムの一部として再定義します。

  • 「統合ケアパス」への参加: 医師や他の専門職との「品質サークル(Quality Circles)」や共通のプロトコルを構築し、多職種が連携して一人の患者を診る体制を強化します 。
  • リソース不足の解消: ドイツなどで報告されている「過重な業務負担」や「スタッフ不足」といった障壁を解消するため、事務作業のデジタル化やタスク・シフトを推進し、薬剤師が臨床業務に集中できる環境を整えます 。

5. 臨床能力を高める継続的教育(CPD)

役割の拡大に合わせて、薬剤師自身のスキルセットも更新し続ける必要があります 。

  • 臨床スキルの再定義: ワクチン接種技術や、複雑な薬学的レビュー(Medication Review)を適切に行うための、高度で実践的な継続的専門開発(CPD)プログラムを構築します 。


まとめると

研究チームは、薬剤師が単なる「薬の供給者」から「ケアの提供者」へと移行していることを強調しています 。

重要: サービスの広範かつ持続可能な実装には、「適切な規制枠組み」と「構造的な公的償還モデル」の整備が不可欠です 。

この調査結果は、今後の日本の薬局サービスや報酬体系の議論においても、欧州の先進事例として非常に示唆に富む内容と言えます。

4/24/2026

厚生労働省(清原薬剤管理官)の方向性 vs 財務省の主張 比較整理

 厚生労働省(清原薬剤管理官)の方向性 vs 財務省の主張 比較整理

ここで「厚生労働省が懸念する薬局・薬剤師の課題」と、今回の財務省財政制度分科会資料(2026年4月23日、P36-43)の主張を、課題認識・解決方向・優先視点の観点で比較してみましょう。これによって、政府方針として加速する可能性のあることを再認識できるのではないかと思います。(前ブログ記事と被りますが・・・)

 

1. 厚生労働省(清原薬剤管理官)の主な方向性(2026年度調剤報酬改定の背景・意図)

清原氏は「患者のための薬局ビジョン」策定から10年経過を節目に、立地依存型(門前・医療モール型)からの脱却を最優先メッセージとして位置づけています。

  • 主な懸念・課題:
    • 薬局数の過剰指摘がある一方で、都市部集中・地方偏在(新規出店が過密地域に集中 → 地方空洞化)。
    • ビジョン目標(2025年:全薬局がかかりつけ機能を持つ、2035年:立地を門前から地域へ移行)の遅れ(かかりつけ薬剤師指導料算定率一桁台、処方箋集中率上昇 → 面分業が進まない)。
    • 将来の処方箋減少時代(人口減少・外来減少)への未対応。
    • 対物業務中心から対人業務・地域支援へのシフト不足(薬歴一元化、困難患者支援の弱体化)。
  • 解決方向:
    • 「門前薬局等立地依存減算」(▲15点)新設、処方箋集中率85%基準で調剤基本料の加減算 → 立地ではなく「中身」(対人業務・地域根ざし)で選ばれる薬局へ誘導。
    • 服用薬剤調整支援料2などで高度対人業務を評価。後発品調剤体制加算を地域支援・医薬品供給対応体制加算に統合。
    • 医療DX活用を前提に、門前薬局でもかかりつけ機能発揮可能とするが、現時点では「過渡的に立地で整理」。
    • 地域で困難患者を支える薬局(「目玉焼きの白身」部分)を守る視点も強調(効率化偏重を戒め)。

→ 患者利益・アクセス確保・質の向上を最優先に、機能転換・地域移行を政策誘導。

 

2. 財務省の主張(前回整理の再掲)

  • 主な懸念・課題:
    • 小規模分散体制の極端な非効率(常勤薬剤師2人以下が約2/3、1人薬局が1/3、月処方箋1,000回未満が5割超)。
    • 配送・在庫・薬歴一元化の非効率、過当競争による薬剤師の質低下、患者不利益。
    • 過去30年で薬局数6割増・薬剤師数3倍増にもかかわらず、労働生産性低下。
  • 解決方向:
    • 薬局の集約化・大規模化が不可避(地域単位での外来機能統合・大規模化、医療機器共同調達)。
    • 限られた医療人材の最適配分と効率的な提供体制構築を優先。
    • 診療報酬全体でアウトカム評価中心の包括払い化推進(少ない人員で質を確保)。

→ 財政健全化・労働生産性向上・資源最適化を最優先に、構造的な集約・効率化を強く主張。

 

3. 比較表(核心的な違い・共通点)

項目

厚生労働省(清原氏)

財務省

比較ポイント

課題の本質認識

立地依存・偏在・ビジョン遅れ(患者アクセス・質)

小規模分散・非効率(資源浪費・生産性低下)

共通:過剰・非効率

 違い:厚労省=「患者目線」、

財務省=「財政・効率目線」

解決の方向性

機能転換(対人業務強化)+地域移行

集約化・大規模化+人員削減志向

厚労省:質・アクセス重視の「中身改革」 

 財務省:規模・効率重視の「構造改革」

優先事項

患者利益・かかりつけ機能・地域医療維持

財政負担軽減・人材最適配分・包括払い

厚労省:激変緩和・患者守る

財務省:大胆な効率化

報酬改定のイメージ

立地依存減算+対人加算(メリハリつけつつ緩和)

包括払い化で「少ない人員で質確保」を評価

両者とも小規模・門前不利だが、財務省の方がより抜本的

将来像

全ての薬局がかかりつけ機能を持ち、地域に根ざす

効率的・大規模・集約された提供体制

重なる部分:DX活用・対人シフト

 

4. 薬局経営・薬剤師への影響(統合的視点)

  • 共通の圧力: 従来型の小規模・門前・分散型薬局は両省から明確に不利。2026年度調剤報酬改定以降、集約・大規模化と対人業務強化の両輪で再編が進む公算大。
  • 厚労省寄りの影響: 地域密着・対人業務・困難患者支援に注力する薬局は評価されやすい(生存余地あり)。DXで門前でもかかりつけ化可能。
  • 財務省寄りの影響: 規模の経済・共同調達・包括評価に対応できない薬局は淘汰リスク高。M&A・チェーン化加速。
  • 薬剤師個人: ルーチン(対物)業務縮小 → 対人・地域連携・高度薬学管理スキルがより求められる。質の高い薬剤師が大規模・地域拠点型薬局で活躍しやすくなる一方、雇用調整圧力も。

 

まとめと推考

財務省は財政・効率最優先の強力な後押し(集約化不可避)を、厚生労働省(清原氏)は患者・質・アクセス重視の政策誘導(立地依存脱却)を行っています。

方向性は本質的に一致(小規模分散・門前依存の是正)していますが、トーンと重点に明確な違いがあり、骨太方針2026や今後の予算・報酬改定で両省のバランスがどう取られるかが鍵です。

結果として、薬局業界は「効率化+患者中心機能強化」の両立を迫られる形となり、中長期的に大規模・地域貢献型薬局への再編が加速すると予想されます。

国策として、消費税減税や社会保険料の低減などの政策を検討➡社会保障費財源の圧縮といった喫緊の課題も踏まえると、今後も医療制度への風当たりは強く、一般企業の成長努力を見習いながら舵取りをしていく必要性は必須といえるのかもしれません。

そして薬局・薬剤師の方向性は、最終的には国際的な「ファーマシューティカルケア」(概念)から「患者中心の医療」(アウトカム実践)の方向性にかなり近くなると思います。実現できるとすれば、薬剤師は政策的に重要なポジションであり、年収アップが期待される可能性も大きくなるのではと思いますよ。それまでのプロセスはかなりの質的なギャップと信頼のハードルの高さをクリアする必要性はあります。そういった意味で薬剤師の意識改革、薬局DXは急務なのかもしれません。

財務省の薬局・薬剤師に関する評価の概要と影響整理

 財務省の薬局・薬剤師に関する評価の概要と影響整理

2026年4月23日の財政制度等審議会財政制度分科会資料(「人口減少社会の中での総合的な国力の強化(財政各論Ⅰ)」P36-43)および関連記事等の骨太2026に向けて、財務省は薬局の「小規模分散」体制を強く問題視することを示唆しています。

過去30年で薬局数は約63%増加、薬剤師数は3倍以上に膨張した一方で、常勤薬剤師2人以下の薬局が約2/3、月処方箋受付回数1,000回未満の薬局が51%超を占める状況を「非効率の象徴」と批判。中医協「調剤その2」(2025年11月28日資料)を引用し、以下の課題を列挙しています:

  • 医療提供体制の非効率化(1薬局あたりの処方箋減少)
  • 医薬品配送・在庫管理の非効率(配送先増加、過剰在庫、供給不安時の不足助長)
  • 薬歴の一元化困難、かかりつけ薬剤師機能の脆弱化、薬剤師の質低下
  • 過当競争による患者不利益

これを踏まえ、「限られた医療人材の最適配分と効率的な医療提供体制構築の観点から、薬局の集約化・大規模化に向けた取組が不可避」と明言。人口減少下での外来需要減少傾向にもかかわらず薬局・薬剤師が増え続けていることを「労働生産性低下」の一因とし、骨太方針2026の事前検討として位置づけています(診療報酬のアウトカム評価中心・包括払い化推進も連動)。

これが今後の政策(2026年度以降の調剤報酬改定、予算編成)に強く影響する可能性が非常に高くなっていくことが想像されます。これら財務省の論点をAI分析でまとめてみました。

 

① 今後の薬局経営への影響

財務省の主張は、小規模分散型から大規模・集約型への業界再編を強く促す内容です。主な影響は以下の通りです。

  • 小規模薬局の経営圧力強化・淘汰リスク:独立小規模薬局(特に門前薬局)は存続が極めて厳しくなる。合併・M&A・閉局が加速し、薬局総数の適正化(減少方向)が進む可能性が高い。
  • 大規模化・集約化のインセンティブ:地域単位での外来機能統合・大規模化、医療機器共同調達などを推進。規模の経済により、配送効率化、在庫適正化、設備投資の重複解消が可能になり、収益性向上が見込める。
  • 診療報酬体系の構造改革:出来高払いから「アウトカム評価中心の包括払い化」へ転換を主張。これにより、少ない人員で質の高いサービスを提供する薬局が評価されやすくなる一方、従来の人件費依存・小規模手厚い運営は不利に。2026年度調剤報酬改定では調剤基本料等のさらなる適正化(小規模不利化)が予想される。
  • 全体的な経営環境:短期的に経営不安定化・競争激化のリスク。中長期では効率化・ICT活用・地域連携が鍵となり、大手チェーンや地域密着型大規模薬局が優位に立つ再編が進む。

 

② 今後の薬剤師への影響

薬剤師養成自体についても「既に定員が過剰で増加させる必要性は乏しい」と指摘(医師・歯科医師と同様)。これと薬局集約化が連動し、以下の影響が予想されます。

  • 需給調整・就職市場の変化:養成定員の大幅削減(医師並みの「大胆な定員削減」方向)が議論され、新規薬剤師の供給抑制が見込まれる。人口減少+効率化で需要成長が鈍化するため、全体として雇用調整圧力がかかる可能性(特に小規模薬局減少による)。
  • 業務内容・役割のシフト:小規模分散解消により、大規模薬局・チェーンへの就職集中が進む。対人業務(服薬指導・薬歴管理・かかりつけ機能)の充実、多職種連携・タスクシフトが加速し、専門性・質の向上が求められる。一方、ルーチン業務の効率化(ICT活用)で業務量調整が進む。
  • 労働環境・処遇への影響:過当競争の緩和により質重視の環境整備が進む可能性がある一方、効率化優先でリストラ・賃金抑制圧力も。ワークライフバランス改善の余地(大規模化によるシフト運用など)もある。
  • 長期的な視点:医療専門資格の統合や業際規制見直しも視野に入れており、薬剤師の役割がより専門的・効率的なものに変化。スキル・対応力の高い薬剤師が有利になる。

 

まとめと推考:

財務省は財政健全化・国力強化の観点から「効率化最優先」を掲げており、日医会長のような反発(「医療を製造業と比較するのは無理がある」など)が出ていますが、骨太方針2026や2026年度以降の診療報酬改定に反映される公算が大きいです。

薬局経営者は集約化・効率化戦略の早期検討、薬剤師は専門性強化と大規模施設での活躍を視野に入れる必要があるでしょう。

また、薬剤師の母校がなくなってしまうことも懸念ですね。

厚生労働省が懸念する薬局・薬剤師の課題と改正の方向性

 

厚生労働省が懸念する薬局・薬剤師の課題と改正の方向性

~厚労省薬剤管理官清原氏インタビューおよび関連公式資料に基づく整理~


1. 背景と分析の前提

厚生労働省清原薬剤管理官のインタビュー記事等を中心に、厚労省医薬局・保険局の公式資料(「地域における薬局・薬剤師のあり方について」令和6年資料、「これまでの議論のまとめ」令和7年資料、薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会資料など)を補完してAI分析をしてみました。

清原技官は一貫して「患者のための薬局ビジョン」(平成27年策定)の実現が遅れていることを懸念しており、対物業務中心から対人業務中心への本格シフト、地域全体での機能分担・連携、患者目線の信頼確保を強く求めています。

 

2. 厚生労働省が懸念する主な課題(整理)

厚労省は、少子高齢化・在宅医療需要増・医療人材不足の進行を背景に、以下の課題を深刻に認識しています。

  1. 認定制度(健康サポート薬局・地域連携薬局・専門医療機関連携薬局)の認知度・活用低迷
    • 認知度は約8%程度と極めて低く、利用者にとって「メリットが不明確」。
    • 届出数も全体の薬局数(約6万件)に対して少数(健康サポート薬局約3,000件台、地域連携薬局約4,000件台)。
    • 名称使用以外のインセンティブがなく、薬局側のモチベーションも低い。
  2. 個別薬局による多機能対応の限界
    • 医薬品供給、在宅対応、夜間・休日対応、健康サポート、新興感染症・災害対応など、地域で求められるサービスが多岐にわたる。
    • 小規模薬局や門前薬局では単独対応が実質的に不可能。
    • 結果、在宅患者の24時間対応やへき地・離島の医薬品提供が脆弱。
  3. 対人業務シフトの遅れと業務効率化の遅滞
    • 令和元年薬機法改正で「調剤後の継続的な服薬指導・服薬状況把握」が義務化されたが、対物業務(調剤・監査等)の負担が依然大きく、対人業務に十分な時間が割けない。
    • ポリファーマシー防止や残薬解消、医師へのフィードバックが十分に機能していない。
  4. 地域・業態・機能の偏在
    • 都市部・門前型薬局に集中し、地方や在宅・夜間対応ができる薬局が不足。
    • 将来的には薬剤師の「供給過剰」が予想される一方で、病院薬剤師や地域偏在は依然として深刻。
  5. 医薬品供給・経営面の現実的負担
    • 高額薬剤の在庫負担増、長期収載品選定療養導入による現場負担、供給不安定時の対応難。
    • 患者が「どこに行けばいいかわからない」事態を防げていない。

 

3. 厚生労働省が目指す改正・推進の方向性

技官インタビューおよび検討会資料から、厚労省は「地域包括ケアシステムの深化」と「患者・生活者目線」を軸に、以下の方向で制度改正・運用改善を進めています。

  1. 薬局機能の明確化と制度見直し
    • 健康サポート薬局・認定薬局の役割・要件を整理・強化(共通機能は「かかりつけ機能の最低限確保」、地域全体で分担すべき機能は輪番・拠点化)。
    • 認定制度の質確保(実績要件の厳格化、研修義務化、届出制→認定制への移行検討)。
    • 患者が「自分に合った薬局」を選びやすい情報提供を強化(医療情報ネット等での検索機能向上)。
  2. 地域連携体制の構築(最も重視されている点)
    • 個々の薬局に最低限の機能(服薬把握・24時間対応・在宅基本対応)を求めつつ、夜間・休日・高度在宅・災害対応などは薬局間連携・輪番制・拠点薬局で確保。
    • 自治体・薬剤師会が中心となり、地域の実態把握→協議→体制構築を推進。
    • 医療機関・訪問看護・介護事業所との多職種連携を義務化・インセンティブ化。
  3. 対人業務の本格強化と対物業務の効率化
    • 対物業務の一部外部委託(薬機法改正方向)やICT活用(電子処方箋・全国医療情報プラットフォーム)を加速。
    • 2026年度診療報酬改定では「薬局・薬剤師の偏在是正」を明示的に観点に掲げ、門前・立地依存型への評価厳格化を予定。
    • かかりつけ機能(継続フォロー、薬剤レビュー、セルフケア支援)を報酬で強く誘導。
  4. 薬剤師の資質向上と需給適正化
    • 地域偏在解消策の強化(医療計画への明記検討)。
    • 卒後研修・専門性向上(在宅・がん・感染症対応)の体系化。
  5. 薬機法等制度改正との連動(2025年改正含む)
    • 要指導医薬品のオンライン販売拡大、指定濫用防止医薬品の販売規制強化。
    • 医薬品の適正使用推進とアクセス確保の両立。

 

4. まとめと推考

厚労省清原氏は、「すべての薬局が地域で信頼される医薬品の相談窓口になる」というビジョンを強く持っています。しかし、現状は「制度はあるが機能していない」「個別対応の限界」「地域格差」という課題が顕在化しており、「地域全体で連携する仕組みづくり」が最大の焦点です。

今後の改正は、報酬改定(2026年度)で偏在是正・対人業務誘導を、薬機法・認定制度の見直しで機能明確化・連携法制化を、DX・外部委託で業務効率化を同時に進める「総力戦」になると予想されます。

総括的にまとめると、薬局・薬剤師側には、単独完結型から「地域のハブ・ネットワークの一員」への意識転換が強く求めていると結論されます。

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