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10/30/2026

薬局の新規事業、何から始めるべきか? ――7つの事業モデルから「自分の薬局に合う事業」を見つける方法 |薬局ビジネス研究 第4部

 薬局の新規事業、何から始めるべきか?

――7つの事業モデルから「自分の薬局に合う事業」を見つける方法

薬局ビジネス研究 第4部

30秒要約

薬局の新規事業は、成功事例の模倣ではなく、自社の強み・地域の需要・支払者・実行条件を確かめることから始まります。7つの事業モデルを「適合性・収益性・実現可能性」で検討し、法令・医療安全などの必須条件を確認。最後に7問で、次に調べるべき未確認事項を見つけます。

はじめに

「この事業は儲かりそうだ」ではなく、「自分の薬局なら、まず何を確認すべきか」。

薬局の新規事業を考えるとき、最初に必要なのは新しいサービスを探すことではありません。自分の薬局が持っている強み、地域で解決されていない問題、そして、その問題を解決するために必要な条件を確認することです。

これまでの「薬局ビジネス研究」では、薬局の経営資源、ローソン・カーブス・郵便局など異業種の成功メカニズム、海外薬局の事業モデルを考察してきました。第4部では、その研究を中小薬局の経営判断につなげます。

健康相談、在宅・介護連携、企業向け健康支援、専門性を生かした物販など、7つの事業モデルを比較しながら、自分の薬局で何を確認し、どの事業を選び、どの事業を見送るべきかを考えます。この記事の目的は、成功する事業をランキングすることではありません。読者が記事を読み終えたときに、自分の薬局で最初に確認すべきことを一つ決められることです。

第1章 成功事例を知っても、自分の薬局の答えは見つからない

コンビニエンスストアは、商品を販売するだけでなく、生活に必要な多様なサービスを提供しています。フィットネス事業では、運動そのものに加え、利用者が継続して通う仕組みが重要な価値になっています。郵便局は、全国に広がる拠点と地域住民との接点を活用しています。

これらの事業から、薬局が学べることは少なくありません。しかし、成功している企業のサービスをそのまま導入すれば、薬局でも成功できるのでしょうか。

例えば、薬局で健康食品を増やしても、それだけでコンビニのような集客力が生まれるわけではありません。健康教室を開催しても、参加者が継続して利用する仕組みがなければ、一度きりのイベントで終わるかもしれません。海外の薬局で専門的な薬学サービスが収益化されていても、日本では報酬制度や契約環境が異なります。

つまり、成功事例のサービスと、成功を支えている仕組みは別のものなのです。中小薬局が考えるべきなのは、「何を真似するか」ではなく、「自分の薬局が持つ資源を使って、どのような価値を生み出せるか」です。

あなたの薬局には、他の薬局や異業種には簡単に真似できない強みがありますか?専門性、地域との関係、立地、患者との継続的な接点など、思い当たるものを書き出してみてください。それが新規事業を考える出発点になります。

第2章 新規事業を選ぶ前に確認したい3つの条件

新規事業の候補が見つかったら、すぐに収益を計算したくなるかもしれません。しかし、売上予測より先に確認すべきことがあります。本研究では、事業選択のために3つの評価軸を使います。

評価軸

確認事項

① 適合性

自分の薬局だからできるか。専門性、患者層、地域需要、立地、既存の連携先を生かせるか。

② 収益性

誰が費用を負担するか。支払者、価格、顧客数、必要経費、継続利用の見込みを説明できるか。

③ 実現可能性

今の薬局で始められるか。人材、時間、設備、資金、協力先を確保できるか。

例えば、専門性の高い薬剤師がいても、その専門性を必要とする顧客がいなければ、事業として成立する可能性は低くなります。企業が近くにあっても、企業側に健康支援の需要がなければ、契約には結び付きません。また、利益が見込めても、薬剤師の人員に余裕がなければ、既存の調剤業務に支障を来す可能性があります。

この3つの条件は、どれか一つが高ければよいというものではありません。さらに、法令、医療安全、個人情報保護、保険給付との整合性は、採点以前の必須条件です。実施できるかどうか確認できない事業は、まず制度上の条件を調べる必要があります。

第3章 薬局が検討できる7つの事業モデル

薬局の経営資源を活用する事業は、健康相談だけではありません。これまでの研究から、検討対象を7つに整理しました。

事業モデル

主な提供価値

最初に確認すること

主な支払者

① 健康相談・予防支援

健康課題の把握と生活改善支援

誰が費用を負担するか

患者・自治体

② 専門薬剤師サービス

疾患・薬物療法に関する専門支援

保険給付との区分と需要

患者・医療機関

③ 在宅・介護連携支援

服薬環境改善と多職種連携

人員・移動時間と採算

施設・事業所

④ 企業向け健康支援

従業員の健康教育・相談

企業側の課題と契約意思/健康情報の同意

企業・健保組合

⑤ 生活支援・地域拠点

日常生活上の困りごとの解決

提携先と役割分担

自治体・提携先

⑥ デジタル継続支援

PHR等を活用した継続支援

利用継続と運用負担/健康情報の同意

企業・患者

⑦ 専門性を生かした物販

適切な商品選択と利用支援

粗利益と在庫回転

患者

※「主な支払者」は事業検討上の候補例であり、請求の適法性や契約成立を保証しません。特に②専門薬剤師サービス、③在宅・介護連携支援、⑥デジタル継続支援では、保険給付対象の業務と独立サービス候補を区別し、保険給付に含まれる行為への重複請求を行わないことが前提です。独立契約の実施可否は、業務内容・契約・記録・請求ごとに確認が必要です。

この7分類は研究上の整理であり、事業が完全に独立しているわけではありません。例えば、健康相談と専門物販、企業向け健康支援とデジタル継続支援などを組み合わせることも考えられます。

④企業向け健康支援は、企業・健保組合等の契約上の課題に対応するもので、産業医の法定職務を代替するものではありません。

分類について:7分類は提供価値・対象顧客・提供手段など異なる切り口を含む、事業検討用の整理であり、排他的な分類ではない。⑥デジタル継続支援は他のモデルを支える提供手段としても活用できる。保険者・自治体の委託事業、施設向け法人サービス、セルフメディケーション支援なども候補になり得る。

ただし、最初から複数の事業を同時に始めることは推奨しません。どのサービスに需要があり、何が利益を生み出しているのかを把握しにくくなるからです。まずは一つの課題に絞り、小さく検証する方が合理的です。

既存制度との関係:健康増進支援薬局の認定制度は令和9年5月20日施行とされます(厚生労働省・令和8年6月30日通知。参考資料参照)。地域連携薬局等の制度も、事業の基盤や差別化の条件になり得ます。認定名称の使用、移行措置、個別の認定要件については最新の公的資料を確認してください。

第4章 自分の薬局には、どの事業が合うのか?

ここからが、今回の記事で最も重要な部分です。7つの事業モデルを眺めるだけでは、自分の薬局で何を始めるべきか判断できません。そこで、薬局の特徴ごとに、最初に確認すべき条件を整理しました。

自分の薬局の特徴

検討する事業

最初の確認事項

在宅医療に強い

③ 在宅・介護連携支援

既存業務では対応できていない課題は何か

管理栄養士がいる

① 健康相談・予防支援(栄養相談)

栄養支援を必要とする顧客・契約先はあるか

特定疾患に詳しい

② 専門薬剤師サービス

専門性を必要とする未充足の需要はあるか

企業・工場が近い

④ 企業向け健康支援

企業が費用を負担してでも解決したい課題は何か

住宅地にある

① 健康相談・予防支援/⑦ 専門性を生かした物販

住民が繰り返し利用する理由はあるか

デジタル化が進んでいる

⑥ デジタル継続支援

利用者が継続して使える仕組みか

地域連携が強い

⑤ 生活支援・地域拠点

既存の地域サービスと何が違うか

この表で重要なのは、事業候補の右側にある「最初の確認事項」です。例えば、管理栄養士が在籍している薬局なら、栄養相談事業が候補になるでしょう。しかし、管理栄養士がいるからという理由だけで、有料の栄養相談を始めても、利用者が集まるとは限りません。むしろ、地域の医療機関や企業が、どのような栄養支援を必要としているのかを先に調べる必要があります。

在宅医療に強い薬局でも同じです。すでに医師や訪問看護師、ケアマネジャーとの関係があることは強みです。しかし、新たな事業として何を提供するのか、既存の保険業務とどう区別するのかを確認しなければなりません。

「できること」から事業を決めるのではなく、「求められていること」と「自社の強み」が重なる部分を探す。これが事業選択の基本になります。

第5章 「患者に喜ばれる」と「事業として成立する」は違う

薬局の新規事業を考えるとき、避けて通れない問題があります。それは、社会的に価値があるサービスでも、必ずしも収益を生み出せるとは限らないということです。

例えば、薬剤師が30分かけて健康相談を行うとします。薬剤師の時間単価を仮に3,200円とすると、直接労務費だけで1,600円です。さらに、準備、記録、設備、集客などの費用もかかります。無料で提供すれば、薬局がその費用を負担します。

では、有料にすれば解決するのでしょうか。そう単純ではありません。相談者が費用を支払う意思を持っているか、既存の保険給付と重複しないか、継続して利用してもらえるかなど、確認すべき条件があります。

そこで考えたいのが、サービスを受ける人と、費用を負担する人を分けるという方法です。例えば、企業が従業員向けの健康教育を薬局に委託する場合、サービスを受けるのは従業員ですが、費用を負担するのは企業です。自治体の健康増進事業でも、事業の仕様や契約条件に適合すれば、住民への健康支援と事業収入を両立できる可能性があります。

ただし、企業や自治体が契約するには、相手にとっての価値を示さなければなりません。企業なら、従業員の健康課題への対応や健康教育の充実などが考えられます。自治体なら、地域住民の健康増進や政策目標との整合性などが重要になるでしょう。

誰がこのサービスを必要としているのか?その人や組織は、何を解決したいのか?その価値に対して、誰が費用を負担するのか?この3つに具体的に答えられなければ、まだ事業化を決める段階ではありません。

保険給付との境界:保険給付に含まれる服薬指導等を独立した有料相談と誤認して別料金を請求しない。無料サービスや値引きが患者誘引規制に抵触しないかも確認する。健康情報を扱う場合は、誰の情報を誰にどの根拠・同意で提供するか明確にする。

第6章 収益性を数字で考える――3つの事業モデル

新規事業を考える際には、売上だけでなく、利益が生まれる仕組みを確認する必要があります。ここでは、収益構造の異なる3つのモデルを比較します。以下の数値は計算方法を示すための仮定であり、実際の市場価格や平均的な利益率ではありません。

① 企業向け健康支援:契約型モデル

月額3万円で企業向け健康支援を提供すると仮定します。

項目

月間試算

4社との契約による売上

120,000円

サービス提供の直接労務費

64,000円

営業・契約管理費

32,000円

その他運営費

20,000円

試算利益

4,000円

この条件では、4社契約しても月間利益は4,000円です。1社当たりの限界利益は14,000円で、固定的な費用を52,000円とすると、損益分岐点は約3.71社です。したがって、4社以上の契約が必要になります。ただし、これは単純化したモデルです。初期投資、税金、追加の顧客獲得費用などは十分に反映していません。 1社解約して3社になると試算利益は−10,000円。時間単価3,200円は市場相場の断定ではなく仮定であり、薬剤師の月20時間分の提供時間を既存業務から振り向ける機会費用や、契約数に応じて増える営業管理費にも注意する。

グラフ用の試算値(仮定):契約1社:−38,000円、2社:−24,000円、3社:−10,000円、4社:+4,000円、5社:+18,000円、6社:+32,000円、7社:+46,000円、8社:+60,000円。損益分岐点は52,000÷14,000=約3.71社。

最初に確認すること:企業が月額料金を支払うだけの課題を持っているか。まずは企業の担当者にヒアリングすることが出発点です。

② 専門性を生かした物販:商品粗利益型モデル

商品区分ごとの確認:食品:疾病の治療・予防を標榜する表示等の規制、健康増進法・景品表示法を確認。一般用医薬品:販売区分・情報提供等の要件を確認。医療用医薬品:処方箋に基づく販売が原則とする改正規定について、適用時点と例外を含めて確認する。医療機器:製品区分ごとの許可・届出の要否を確認。現行法令と個別商品を所管庁・専門家に確認する。

物販の試算(仮定):販売価格2,000円、仕入原価1,200円、1個当たり粗利益800円。50個なら粗利益40,000円、追加運営費を仮に20,000円とすると試算利益20,000円。利益=800円×販売個数−20,000円、損益分岐点25個。10個−12,000円/30個+4,000円/50個+20,000円/70個+36,000円/100個+60,000円。追加費用には販促・管理・廃棄等が考えられ、個別見積もりが必要。

ここで確認したいのは、販売個数だけではありません。在庫が売れ残るリスクや、一般小売業との価格競争も考慮する必要があります。最初に確認すること:その商品を、顧客が一般小売店ではなく自分の薬局で購入する理由は何か。単に商品を並べるだけでは、薬局の専門性を事業上の強みに変えたことにはなりません。

③ 在宅・介護連携支援:既存業務の改善と保険外の独立サービスを区別する

③-A 既存の在宅業務の採算改善(新規事業ではない):在宅訪問・移動・記録・連携の所要時間を見直し、既存の保険業務の採算と品質を改善する。仮に90分、薬剤師時間単価3,200円なら直接労務費は4,800円(計算方法を示す仮定)。この額を根拠に患者へ別料金を請求することはできない。

③-B 保険外の独立サービス(事業化の仮説):例えば、介護施設・事業所との独立契約により、施設の服薬管理体制を支援したり、職員研修を提供したりすることが考えられる。ただし、著者の実例ではなく事業候補の仮説である。契約料を仮に月30,000円、提供・準備・移動・記録に合計6時間、時間単価3,200円、その他経費5,000円とすると、試算利益は30,000−19,200−5,000=5,800円となる。価格・時間・経費は計算方法を示すための仮定で、市場価格や実績ではない。

最初に確認すること:施設・事業所が独立したサービスを必要とし、契約料を負担するか。既存の保険業務と業務内容・記録・契約・請求を明確に分離できるか。同じ行為を保険算定と自費の両方で請求しない。交通費等の徴収については、対象サービスに適用される現行通知・契約条件を個別に確認する。参考資料6は保険医療機関等に関する通知であり、薬局の③-Bにそのまま適用できる根拠としては扱わない。

モデル

利益を左右する要素

最大のリスク

企業向け健康支援

契約数・単価・継続率

契約獲得の難しさ

専門性を生かした物販

粗利益・販売数・在庫回転

売れ残り・価格競争

③-B 保険外の独立サービス

契約料・稼働時間・移動効率

施設の需要と契約の継続

このように、同じ「薬局の新規事業」でも、利益を生み出す仕組みは異なります。したがって、すべての事業を売上高だけで比較することは適切ではありません。自分の薬局では、どの費用が大きくなり、どの条件を満たせば利益が残るのか。そこまで確認して初めて、収益性の評価ができます。

第7章 業務は標準化し、薬局の価値は個別最適化する

中小薬局が新しい事業を始めるとき、大企業と同じ規模や品ぞろえで競争する必要があるとは限りません。むしろ、自社の専門性や地域との関係を生かすことが重要になる場合があります。

ただし、個別対応には時間がかかります。患者一人ひとりの状況を把握し、適切な支援を考えるには、薬剤師の専門的な判断が必要です。そこで重要になるのが、業務の標準化と、提供価値の個別最適化を組み合わせる考え方です。

調剤、医薬品管理、記録、請求、安全管理などの業務は、ルールに基づいて品質を確保し、効率化する。一方で、患者や地域住民に提供するサービスは、それぞれの課題や生活環境に応じて設計する。

標準化と個別最適化:業務の標準化:調剤・記録・請求・安全管理・情報共有→品質の安定・効率化。価値の個別最適化:専門相談・生活支援・疾患別支援・地域連携→顧客固有の課題解決。両者を組み合わせ、薬局独自の価値を継続して提供する。ただし需要・支払者・採算性の検証が必要。

ただし、個別最適化すれば必ず収益が増えるわけではありません。顧客が価値を認め、費用を負担する仕組みがあり、薬局側にも適切な利益が残ることが必要です。

その意味で、DXやAIの活用も、単に業務時間を短縮することだけが目的ではありません。創出した時間を、どのような専門的支援に使い、その価値をどう持続可能な形にするか。そこまで考えることが、薬局の経営戦略につながります。

標準化で創出した時間は、7問チェックのQ5「実行能力」を確保するための原資にもなります。

第8章 事業を始める前に「やらない条件」を決めておく

新規事業を考えるとき、成功する条件ばかりを探してしまうことがあります。しかし、中小薬局では、失敗したときの経営への影響も無視できません。そのため、事業開始前に「見送る条件」を決めておくことを推奨します。

支払者が具体的に見つからない。必要な人員を確保できず、既存の調剤業務に支障が出る。損益分岐点に達する現実的な見込みがない。自社の強みを生かせず、価格競争しかできない。法令・医療安全上の条件を満たせない。

ただし、条件が満たされないからといって、すべて直ちに撤退すべきという意味ではありません。例えば、顧客の需要は確認できているものの、人員が不足している場合には、サービス内容の縮小や外部との連携によって改善できるかもしれません。一方、法令上の問題や医療安全上の重大な問題がある場合には、解決するまで実施すべきではありません。

判断

条件

次の行動

実証する

7問すべてが「はい」(第9章の判定ルール)

小規模に試す

改善する

課題が明確で解決可能

設計を見直す

保留する

判断材料が不足

追加調査する

見送る

重大な障壁がある

他の候補を検討する

重要なのは、始めること自体を目的にしないことです。「やらない」という判断も、経営資源を守るための重要な戦略です。

第9章 この記事を読んだら、まず自分の薬局で確認してほしいこと

ここまで7つの事業モデルを比較してきました。では、実際に自分の薬局で何から始めればよいのでしょうか。最初から事業計画書を作る必要はありません。まずは、次の7つの質問に答えてみてください。

質問

チェック項目

回答

Q1 自社の強み

患者・連携先から評価されている強みを、具体例つきで1つ説明できるか

はい/いいえ/未確認

Q2 需要

その強みで解決できる困りごとを顧客・連携先に直接確認し、既存サービスより選ばれる理由があるか

はい/いいえ/未確認

Q3 支払者

サービスに費用を負担する人・組織の候補があるか

はい/いいえ/未確認

Q4 採算

価格・必要時間・初期投資を試算し、損益分岐点と撤退時の損失額が分かるか

はい/いいえ/未確認

Q5 実行能力

必要な人の時間(月何時間か)を算出し、調剤業務から確保する方法が決まっているか

はい/いいえ/未確認

Q6 制度・安全

法令・保険給付との区分・医療安全・個人情報・事故時の責任を確認したか

はい/いいえ/未確認

Q7 検証方法

小さく試す方法と継続・撤退の判断基準を決めているか

はい/いいえ/未確認

現時点で7つすべてに「はい」と答えられなくても、確認作業は始められます。ただし小規模実証に進む条件は7問すべて「はい」です。むしろ、「いいえ」や「未確認」が見つかることに意味があります。例えば、強みはあるが支払者が見つかっていないなら、次に行うべきことは設備投資ではなく、顧客や契約先へのヒアリングです。地域需要があるものの採算性が分からないなら、必要な時間と費用を試算することから始められます。法令や医療安全上の条件が確認できていなければ、実施を決める前に調査が必要です。

判定は合計点で行いません。Q6は他の項目で相殺できない必須条件です。具体的な判定は次の表で確認します。

Q1〜Q2=適合性、Q3〜Q4=収益性、Q5=実現可能性、Q6=必須条件、Q7=検証方法。複数条件が重なる場合はQ6を最優先します。

確認結果

判断

次の行動

Q6=いいえ

見送る

法令・安全上の問題を解消するまで実施しない

Q6=未確認

保留

制度・安全確認を優先する

Q2・Q3=いいえ/未確認

保留

需要と支払者をヒアリングする

Q4・Q5=いいえ/未確認

改善

価格・規模・人員配置を見直す

Q1〜Q7すべて=はい(Q6の法令・安全条件を含む)

小規模に実証

期間・撤退基準を決めて試す

Q1=いいえ/未確認、またはQ7=いいえ/未確認

保留

強みの実証、検証計画・撤退基準を具体化する

この記事を読んだ後、すぐに新規事業を始める必要はありません。まず、自分の薬局にとって最も重要な「未確認の条件」を一つ見つけること。それが、事業化に向けた最初の一歩です。

今月やること:①自社の強みを患者・連携先からの評価で確認する。②地域の困りごとと支払者を一人ずつヒアリングする。③7問の未確認事項を一つ選び、確認する担当者と期限を決める。

私見|中小薬局の個性を、持続可能な事業に変えたい

私は、中小薬局が生き残るために、大企業と同じサービスを追いかけ続ける必要はないと考えています。もちろん、調剤業務の標準化や効率化、デジタル化は必要です。しかし、それだけでは患者や地域住民から選ばれる理由を十分につくれないかもしれません。

中小薬局には、それぞれ異なる個性があります。特定の疾患に詳しい薬剤師がいる。管理栄養士がいる。在宅医療に積極的に取り組んでいる。地域の医師や介護関係者との関係が深い。こうした個性は、重要な経営資源になり得ると考えています。

ただし、個性があるだけでは事業にはなりません。その個性によって、誰の、どのような困りごとを解決できるのか。その価値を誰が必要とし、誰が費用を負担するのか。さらに、薬局の経営を圧迫せずに、継続して提供できるのか。そこまで考えて初めて、薬局の個性を経営資源に変えられるのではないでしょうか。

私は、薬局の新規事業を考えるとき、「何を売れば儲かるか」から始めるのではなく、「自分たちの薬局だからこそ解決できる問題は何か」から始めたいと思っています。そして、その価値を無償の奉仕だけで終わらせず、持続可能な仕組みへと発展させたい。今回の7つの事業モデルは、そのための選択肢です。すべてを始める必要はありません。自分の薬局の強みと地域の需要が重なるところを探し、必要な条件を確認し、小さく試す。その積み重ねが、中小薬局の新しい経営戦略につながると考えています。

想定される反論

「小規模な薬局には新規事業に取り組む余力がない」という指摘はもっともです。だからこそ、最初に投資や新サービスの導入を決めるのではなく、既存業務を圧迫しない範囲で、顧客の需要・支払者・実施条件を一つずつ確認することを勧めます。条件がそろわなければ、始めないという判断も合理的です。

今回紹介した7つの事業モデルは、いずれも実施に向けて検討すべき課題があり、事業としての成立が保証されているわけではありません。

しかし、中小薬局が持つ専門性や地域とのつながりを生かすことで、従来の保険調剤にとどまらない新たな価値を生み出せる可能性があります。

本記事では、その可能性をビジネスの視点から整理し、具体的な事業化に向けて何を確認すべきかを提案しました。

大切なのは、すぐに新しい事業を始めることではありません。自分の薬局だからこそ提供できる価値を見つけ、それを持続可能な事業につなげられるかを考えることだと思います。

参考資料・検証上の注意

1. 厚生労働省「薬局・薬剤師に関する情報」 

2. e-Gov法令検索「医薬品医療機器等法」

3. 中小企業基盤整備機構「J-Net21」 

4. 厚生労働省「医薬発0630第1号」(令和8年6月30日) 

5. 厚生労働省「令和7年薬機法等改正の概要」 

6. 厚生労働省「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」 

7. 「薬局ビジネス研究」第1部〜第3部(シリーズ関連記事)

※ 本稿の7分類、薬局タイプ別の適性、試算数値は研究上の仮説であり、実際の事業収益や成功率を示すものではありません。個別事業の実施・契約・請求の可否は、適用される現行法令・通知と契約条件を確認してください。

👉【note版】:「薬局の新規事業、何から始める?」――自分の薬局に合う事業を見つける7つの質問|薬局ビジネス研究 第4部


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