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11/03/2026

門前薬局は、処方箋を待つだけでいいのか?――院内処方回帰をチャンスに変える地域医療戦略 医療機関の「院内処方回帰」|第2部

 門前薬局は、処方箋を待つだけでいいのか?――院内処方回帰をチャンスに変える地域医療戦略

医療機関の「院内処方回帰」|第2部

情報時点:2026年11月2日

はじめに|門前の先生が院内処方に戻したら

ある開業医の「院内処方に戻したほうがいいのかな」という話を薬局経営者に伝えると、「門前の先生が院内処方に戻したら、うちの薬局はどうなるんですか?」という不安が返ってきました。特定の診療所の処方箋に依存する薬局にとっては重大なリスクです。しかし、門前という立地は本当に弱みだけなのでしょうか。

1.門前薬局の強みをもう一度考える

診療所に近いこと、患者が診療後に立ち寄りやすいこと、同じ患者の服薬状況を長期に把握できること、医師との情報共有を行いやすいこと。これらは経営資源です。ただし、処方箋受付だけに使えば、医療機関から処方箋が発行されるのを待つ経営にとどまります。門前という立地を、地域住民と診療所をつなぐ健康支援の拠点に変えられないでしょうか。

2.処方箋を待つ前に地域住民と出会う

薬局の健康フェアで血圧測定、健康相談、健診受診の案内、生活習慣に関する情報提供を行う。イベントの目的は集客そのものではなく、住民が自分の健康に関心を持ち、その後も健康管理を続けられることです。必要な場合には住民自身の選択で適切な医療機関を受診する。特定医療機関への不適切な誘導を目的としてはいけません。

実践から考える|健康フェアを「イベント」で終わらせない

私が健康フェアを薬局経営の可能性として考えるのには、経験上の理由があります。約20年前、調剤併設ドラッグストアで、管理栄養士が複数店舗を巡回する健康フェアの運営に取り組みました。管理栄養士1名が4〜7店舗を担当し、熟練度や薬局の協力体制に応じて調整。3か月を1クールとして、各店舗で土日の2日間にわたり開催する仕組みでした。

測定だけで終わらせず、栄養相談と必要に応じた受診勧奨を組み合わせました。受診勧奨先の医療機関を事前にリスト化し、趣旨を説明して紹介先としての承諾を得ること、診療科に合わせて測定内容を設計すること、薬局薬剤師が紹介状を送り受診状況の返信を依頼することも、当時の運営に含まれていました。

数年前には、前職で顧客薬局への支援サービスに携わる中で、この考え方を応用した助言を行い、顧客薬局で取り組みを体系化して実施していただいた経緯もあります。ただし、当初の巡回モデルの全工程を再現したものではありません。

※戦略モデルであり実績比較ではない

約20年前の実践を、そのまま現在の制度・個人情報保護・地域医療の環境に適用できるとは考えていません。現在取り組むなら、本人の意思と医療機関の選択の自由を尊重し、紹介状や受診状況の情報共有について適切な同意と管理を確保し、誘引や利益提供に関するルールも確認する必要があります。

この経験から私が重視するのは、健康フェアの開催自体を目的にしないことです。地域住民の健康上の課題に気づき、必要な医療につなぐ仕組みをつくる。薬局の立地を「処方箋を受け取る場所」から「地域の健康と医療をつなぐ接点」へ転換するという考え方です。これは実践経験に基づく経営上の提言であり、受診率や収益の改善効果を実証した主張ではありません。

3.PHRは一度きりの健康フェアを継続支援につなぐ道具

PHRは、本人が健康・医療情報を把握し、健康管理に活用する仕組みです。家庭血圧、体重、健診結果、服薬状況などを継続的に記録すれば、健康状態を振り返る手がかりになります。ただし、アプリ導入が目的ではありません。紙の記録が適した人もいます。情報共有には本人の同意、利用目的、共有範囲、管理方法の明確化が必要です。PHRサービスと電子カルテ・薬局システムの自動連携は前提にできません。

4.予防から生活習慣病の継続管理へ

住民が健康状態を把握し、必要に応じて健診・受診を行い、医師の診断・治療後は継続的な医学管理につながる。薬局は服薬状況や残薬、日常生活の困りごとを把握し、必要な情報を医師と共有する。医師は診断・治療方針を決定し、薬剤師は薬学的管理を担います。健康フェアやPHR支援そのものが生活習慣病管理料や調剤報酬の算定を生むわけではなく、それぞれ所定の要件を満たす必要があります。

5.診療所と薬局にどのような価値があるか

※過去の経験を踏まえた応用モデル

診療所には家庭での記録や服薬状況を把握できる可能性があり、薬局には処方箋のない住民との接点や調剤後の継続支援という役割が生まれます。医療上の価値と収益増加は同義ではありません。しかし、この構想は単発イベントの採算を証明するためのものではなく、地域住民との長期的な関係を診療所と薬局の経営基盤にするという著者の経営思想です。

6.門前だからできること、門前だけでは足りないこと

糖尿病患者が多い地域なら服薬継続や生活習慣の相談、高齢者が多い地域なら残薬や在宅療養への移行支援、管理栄養士がいる薬局なら栄養面の健康支援など、薬局の専門性と地域の特徴に応じた展開が考えられます。すべての薬局が同じ事業を行う必要はありません。診療所に近いだけで連携は成立せず、医師と患者が必要とする情報を理解することが重要です。

7.保険ビジネスを強化するとは何か

健康フェアで受診者を集め、処方箋を増やすという発想ではありません。必要な医療を必要なときに提供し、診療所では適切な医学管理、薬局では適切な薬学的管理を行い、各々の算定要件を満たす場合に制度上の評価につなげるという考え方です。患者の選択の自由を妨げず、不適切な誘引や経済的利益の提供を避ける必要があります。患者の健康を支えることが先にあり、収益は適切なサービスの対価として考えます。

8.私見|門前薬局の未来は処方箋の枚数だけでは決まらない

健康フェアや健康相談から住民の健康意識を高め、PHRなどを活用して本人の健康管理を支援し、必要な医療につなぐ。治療開始後も診療所と薬局が情報を共有しながら継続管理を支える。門前薬局の優位性を、処方箋を待つ立地から地域の健康を支える立地へと転換する。これが私の経営思想です。特定の収益効果を実証したという主張ではありません。

おわりに

処方箋を発行する診療所と、処方箋を待つ薬局から、予防・治療・継続管理をともに支える診療所と薬局へ。医薬分業の次の時代には、この発想の転換が重要ではないでしょうか。

参考資料

財務省「財政制度等審議会資料」(2025年4月23日) https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20250423/01.pdf

厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

厚生労働省「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/shiryo06.pdf

 

👉【note版】:医療機関の「院内処方回帰」|第2部 門前薬局の未来は、処方箋の枚数だけで決まらない――予防医療から始める新しい経営戦略


10/15/2026

薬局の予防医療を「事業」に変えるには

 


薬局の予防医療を「事業」に変えるには

 ――処方箋ビジネスへの執着を解き、現場の「あと一歩」を利益に変える経営学

※前作『「攻めの予防医療」に薬局の名前はなかった』はこちらからお読みいただけます。

 

1. 導入エピソード:「良いことをしたのに、なぜこんなに肩身が狭いのか」

「先生、今日もお客さんに30分かけて血圧と食事の話をして、受診を勧めたんです。すごく感謝されました。……でも、レジを通ったのは150円の のど飴1個だけです。後ろでは処方箋の待ち時間が伸びて、他のスタッフからは『また長話してるよ』って冷たい目で見られました。私、薬局にとってお荷物なんでしょうか」

これは先日、私がコンサルティングに入っている地方の中規模薬局で、管理薬剤師を務める30代の女性薬剤師から打ち明けられた言葉です。 

彼女は真面目で、勉強熱心で、誰よりも「地域の健康を守りたい」という情熱を持った素晴らしい薬剤師です。店頭での健康相談にも親身に耳を傾け、検査値の異常に気づけば丁寧に受診勧奨を行ってきました。

しかし、彼女が地域の未病患者に時間を割けば割くほど、店舗の「処方箋1枚あたり処理時間」は悪化し、損益計算書(P/L)には1円の利益も計上されないどころか、人件費という名のコストだけが積み上がっていくのです。

一方で、その薬局の社長は私にこうこぼしました。

「コンサルさん、予防医療や健康サポートが大事なのは頭ではわかっていますよ。でもね、うちは目の前の処方箋を1日150枚さばいて、調剤報酬をきっちり算定するので手一杯なんです。1円にもならない健康相談に30分も使われたら、経営が成り立ちませんよ」

管理薬剤師の「患者さんに寄り添いたい」という正義と、経営者の「処方箋ビジネスで会社を守らなければならない」という正義。

私は薬局経営の責任者になってから20年以上、そして経営コンサルタントとして全国の薬局を回る中で、この「2つの正義の衝突」を何百回と見てきました。

私は前作の記事(『「攻めの予防医療」に薬局の名前はなかった』)で、2026年7月に閣議決定された「骨太方針2026」と、その2日後に厚生労働省が公表した『U.E.N.O.Plan ~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~』のギャップについて問題提起しました。 骨太方針2026には「地域住民の健康増進に資する薬局機能及び薬剤師の果たす役割の強化」と明記されたにもかかわらず、具体的な6つの重点領域の実行計画である『U.E.N.O.Plan』には、実施主体として薬局・薬剤師の名前がなかったのです。

この記事には、全国の薬局経営者や現場の薬剤師から大きな反響をいただきました。 そして10月6日 、日本薬剤師会(岩月進会長)は都道府県薬剤師会に向けて『「攻めの予防医療」6つの重点分野における薬剤師・薬局の取組みについて』(日薬業発第331号)という極めて重要な通知と整理図を発出しました。

この日薬のメッセージは、現場で悩む管理薬剤師にとっても、処方箋ビジネスに執着せざるを得なかった経営者にとっても、まさに「視界を一変させるミッシングリンク(失われた環)」となる内容でした。 続編となる本稿では、日本薬剤師会が示した最新の整理をひもときながら、なぜ私たちは処方箋ビジネスから一歩を踏み出せなかったのかを行動経済学とドラッカーの視点から解き明かし、予防医療を「無償のボランティア」から「高収益な事業」へと変える具体的な設計図をお伝えします。

 

2. データと制度から見る冷徹な現実:日薬が示した「既存業務の延長線上」という大転換

「予防医療を事業にするなんて、特別な検査機器を買い込んだり、オシャレなカフェ併設の薬局に改装したりしないと無理でしょう?」

処方箋ビジネスを長年続けてきた経営者ほど、そう身構えてしまいます。

しかし、今回日本薬剤師会が発出した文書(令和8年10月)の冒頭には、私たちの思い込みを覆す実に本質的な一文が記されています。少し長くなりますが、極めて重要ですので引用します。

「今般、日本薬剤師会が示した『「攻めの予防医療」に対する薬剤師・薬局の取組み』は、こうした既存の実践を否定したり、まったく新しい業務へ置き換えたりするものではなく、これまで各薬局や地域で積み重ねてきた取組みを基盤として、その範囲と質をさらに高めていくという考え方です。」 「これらの分野における薬剤師・薬局の取組みは、日常の健康に関する相談や服薬支援などの延長線上にあります。」

このメッセージの意味がおわかりでしょうか。 日本薬剤師会は、「処方箋調剤を捨てて、まったく別の新しい予防ビジネスを始めなさい」と言っているのではありません。「皆さんが毎日カウンターで行っている服薬指導や、患者さん・家族との何気ない会話、検査値の確認。その『延長線上』を少しだけ深く踏み込み、医療・介護・行政・保険者へ確実につなげることこそが『攻めの予防医療』なのだ」と定義したのです。

令和7年の薬機法改正により、従来の健康サポート薬局が「健康増進支援薬局」として法定化され(2027年5月施行) 、国民の主体的な健康保持増進を支援する仕組みが整えられました。その上で、厚労省の『U.E.N.O.Plan(Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health)』が掲げる6つの重点分野に対し、薬局が日常業務の延長線上でどう関わるかが、以下のように極めて具体的に整理されています。

■ 『攻めの予防医療』6つの重点分野における薬局の具体策(日薬整理)

  1. ① 栄養・食生活:食事・栄養相談や生活習慣改善の支援、管理栄養士等と連携した栄養指導、低栄養・フレイルの予防・早期発見、医薬品と健康食品等との相互作用の情報提供。
  2. ② がん・循環器病等:がん検診・特定健診の周知と医療機関への接続、禁煙支援・HPVワクチンの案内、健診結果を踏まえた生活習慣病発症予防、症状・検査値の変化への気づきと受診勧奨、心不全服薬管理指導(再入院予防)、抗がん剤の副作用モニタリングと治療継続支援。
  3. ③ 歯科保健:オーラルフレイルの早期発見と歯科健診勧奨、口腔チェック啓発と歯科接続、歯周病と糖尿病との関連を踏まえた生活指導・口腔ケア相談、口腔ケア用品・義歯関連用品の相談、薬剤性口腔乾燥への対応。
  4. ④ 認知症:服薬状況や会話から認知機能低下に気づき医療・介護・地域支援へつなぐ、認知症予防やMCI(軽度認知障害)の周知・認知症カフェ等への参加支援、副作用・ポリファーマシーの影響確認と適正化、一包化や服薬支援機器による支援、家族相談対応と多職種情報共有。
  5. ⑤ リハビリテーション:ふらつき・転倒・眠気につながる薬剤の適正化、骨粗鬆症患者の服薬継続と骨折・フレイル予防、在宅・退院後の栄養・運動・服薬の支援。
  6. ⑥ 性差に由来するヘルスケア:月経・更年期(男性含む)等の相談対応、妊娠・授乳期のくすり相談と適正使用支援、HPVワクチン・子宮頸がん検診等の啓発、女性のやせ・低栄養・骨粗鬆症等への対応と医療接続、プレコンセプションケアの推進。

そして、これら6分野すべてを支える「共通の取組基盤」として、「薬局DXによる情報の活用(健診・服薬・健康情報の把握・連携)」「健康リテラシー向上(行動変容支援)」「早期の気づき(疾病リスクを捉え医療機関につなぐ)」「多職種・多機関連携(医療・介護・行政・保険者等と協働)」の4つが位置づけられ、<健康(一次予防)>から<発症(二次予防)>、<重症化・介護(三次予防)>までライフステージを通じて関与する姿が描かれています。

【図1:日常業務から広がる「6つの重点分野と4つの取組基盤」】

この一覧を見て、現場の管理薬剤師の皆さんはこう思われたはずです。

「あれ?『薬剤性口腔乾燥への対応』や『糖尿病患者への歯周病の声かけ』『ふらつき・転倒リスク薬の適正化』『骨粗鬆症の服薬継続』……これって、私たちが普段の投薬カウンターでやっている薬学的管理そのものじゃないか!」と。

そうです。予防医療とは、処方箋ビジネスの「外側」にある異世界の仕事ではありません。

処方箋を持って来局する患者さん(二次・三次予防)や、そのご家族・OTC購入者(一次予防)との「日常の接点」の中に、すでに種がまかれているのです。

では、これほど日常業務と地続きであるにもかかわらず、なぜ多くの薬局経営者は「予防医療なんて儲からない」「処方箋枚数を追う方が確実だ」と背を向け、現場の薬剤師は「忙しくてそれどころじゃない」と立ち止まってしまうのでしょうか?

 

3. 行動経済学とドラッカーで解き明かす「処方箋執着」の正体と、事業化へのコペルニクス的転換

頭では「このまま処方箋の枚数と調剤報酬の改定だけに頼っていたら、人口減少と薬価引き下げでジリ貧になる」とわかっている。それなのに、行動が変えられない。

これは経営者や薬剤師の能力が低いからではありません。人間の脳に備わった「3つの行動経済学的バイアス(心のクセ)」が、私たちの足を強く引っ張っているからです。

① なぜ私たちは変われないのか?(行動経済学の3つの罠)

  1. 現在バイアス(双曲割引):

人間は「3年後に得られる大きな利益(予防医療の事業化による安定収益)」よりも、「今日・今月確実に手に入る目の前の利益(処方箋1枚の技術料・加算)」を過大評価してしまう生き物です。「今日の150枚の処方箋」をさばくことに全神経を奪われ、未来への種まきを先送りしてしまうのは、脳の構造上、極めて自然な反応なのです。

  1. サンクコスト(埋没費用)効果と現状維持バイアス:

これまで20年間、分包機を買い、在庫を抱え、調剤報酬の算定要件をクリアするために多額の投資と労力を払ってきました。「これだけ投資した処方箋ビジネスなのだから、最後までここで元を取らなければ損だ」という心理(サンクコスト効果)が働き、新しいやり方への変化を無意識に拒絶してしまいます。

  1. メンタル・アカウンティング(心の会計)のねじれ:

現場の薬剤師の心の中では、「調剤=お金をいただく仕事(保険点数)」「健康相談・受診勧奨=親切でやる無料の奉仕」という別々の財布(心の会計)が作られてしまっています。だから、いざ予防医療でお金をいただこうとすると、「患者さんからお金を取るなんて申し訳ない」という強い心理的ブロック(罪悪感)が働いてしまうのです。

② ドラッカーが教える「顧客の創造」と「財布の分離」

この強力な心のブレーキを解除する鍵を、経営学の父ピーター・ドラッカーと、京セラ創業者・稲盛和夫氏の視点から導き出しましょう。

ドラッカーは『マネジメント』の中で、「企業の目的は顧客の創造である」と述べ、「われわれの顧客は誰か」「顧客にとっての価値は何か」を問い続けよと説きました。

処方箋ビジネスに執着する経営者は、「薬局にお金を払ってくれる顧客(Payer)は、処方箋を持ってくる患者さんと、審査支払機関(調剤報酬)だけだ」と思い込んでいます。だから、調剤報酬の点数表に載っていない「一次予防(病気になる前の支援)」は1円にもならないと結論づけてしまうのです。

しかし、視野を少しだけ広げてみてください。 日本薬剤師会の整理図の基盤には、はっきりと「医療・介護・行政・保険者等と協働」と書かれています。 あなたが薬局のカウンターで、糖尿病患者さんの歯周病リスクに気づいて歯科医院へつないだとき、あるいは働き盛りの50代女性の更年期症状や健診放置に気づいて専門医へつないだとき、一番大きな経済的メリット(医療費の適正化・休職や離職の防止・支援金ペナルティの回避)を得るのは誰でしょうか?

それは、「地域の企業(事業主)」であり、「医療保険者(健保組合・協会けんぽ・自治体国保)」であり、「連携先の地域の歯科医院やクリニック」です。 目の前の生活者から直接「相談料3,000円」を取ろうとするから、心の会計が悲鳴を上げるのです。そうではなく、「価値を受け取る人(住民・患者)」と「対価を支払う顧客(企業・保険者・自治体・自己投資層)」を組み替えること。

【図2:「処方箋待ちモデル」から「三方よしの事業モデル(BtoB/BtoG/BtoC)」への転換図】

 

③ 稲盛和夫氏の「値決めは経営」と、行動経済学の「イフ・ゼン・プランニング」

稲盛和夫氏は「値決めは経営である」と語りました。 調剤報酬という「国が決めた価格」に慣れきった私たちが、自分たちの専門知識と「医療へつなぐ力」に自ら値段をつけ、企業や自治体、生活者に提案する。それは決して大げさな新規事業ではなく、日薬が言う通り「日常の服薬支援の延長線上」をパッケージ化して値札をつける作業に他なりません。

そして、現場の管理薬剤師が明日から無理なく一歩を踏み出すための行動経済学のテクニックが、「ナッジ(Nudge:肘で軽くつつくような小さなきっかけ)」と「イフ・ゼン・プランニング(If-Then Planning:もしXしたら、Yする)」です。

「明日から予防医療を頑張ろう!」という精神論では、人間は絶対に動けません。 しかし、

「【If】もし糖尿病の処方箋を受け付けたら、【Then】最後に必ず30秒だけ『歯ぐきの腫れや歯科健診』のカードを見せて声をかける」、

「【If】もし40〜50代の女性に鎮痛薬や更年期向けのOTC薬について聞かれたら、【Then】1分でできる更年期・骨粗鬆症チェックシートをお渡しする」 

とルールを決めたらどうでしょうか。

これなら、処方箋150枚をさばく忙しい日常の中でも、今日から確実に実行できます。そして、その「たった30秒〜1分の延長線上」を束ねて収益の仕組み(マネタイズ回路)に変えることこそが、経営者の仕事なのです。


【読者の皆様へ:結びとご案内】

ここまで、日本薬剤師会が新たに示した『攻めの予防医療 6つの重点分野』の整理と、私たちが処方箋ビジネスへの執着から抜け出し、日常業務の延長線上で予防医療を「事業」に変えるための思考法をお伝えしてきました。

「日常の投薬の延長線上でできることはわかった。では、具体的にそれをどうやって『売上と利益』に変えるのか? 企業や自治体にいくらで何を提案し、どうやって現場の時間を捻出するのか?」

その「徹底的に具体的な4つの予防医療事業パッケージ(価格表・オペレーション付き)」と、AI薬歴等のDXを活用して「1店舗あたり年間560万円の粗利を生み出す収支シミュレーション&90日間実践ステップ」については、私のnote(有償パート)にて約7,000字の完全設計図として公開しています。

「掛け声だけの予防医療」を卒業し、現場の薬剤師の頑張りを本物の「利益」に変えたい経営者・薬局長の方は、ぜひ以下のリンクからnoteの続きをご覧ください!

👉 [note記事へのリンク]






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