10/26/2026

2026年度調剤報酬改定、中小薬局の利益はどう変わる? ――基本料+2点の裏で、21日処方は▲40点

 2026年度調剤報酬改定、中小薬局の利益はどう変わる?

――基本料+2点の裏で、21日処方は▲40点

2027年6月までに経営者が確認すべき5つの変更点と実行計画

※本記事は公表資料に基づく制度情報と経営分析です。個別の算定要件については、最新の告示・通知・疑義解釈を確認してください。


はじめに|基本料は上がった。それでも利益が増えないのはなぜか?

「6月の改定対応は終わった。届出も済ませた。それなのに、利益が増えた実感がない」

そんな薬局経営者もいるのではないでしょうか。

今回の調剤報酬改定では、調剤基本料1が45点から47点へ2点引き上げられました。

月1,000回の処方箋受付がある薬局なら、単純計算で月2万円の増収です。

ところが、同じ改定で21日分の内服薬の調剤管理料は、1剤50点から10点へと40点引き下げられました。

つまり、基本料が上がっても、処方日数の構成によっては収入が減るということです。

さらに今回の改定では、かかりつけ薬剤師の評価方法、地域支援機能の加算、医療DXの評価体系も変更されました。

いまさらと思われるかもしれませんが、重要なのは、個々の点数の増減だけではありません。

2027年6月以降にどの加算区分を算定できるか。その判断材料となる実績は、すでに2026年5月から積み上がっています。

この記事では、中小薬局の経営に影響する5つの変更点を整理し、月1,000枚のモデル薬局で収支を試算します。

最後に、2027年6月までに経営者が取り組むべき事項と、経営の先人たちの知恵から考える中小薬局の戦略を紹介します。

30秒でわかるこの記事

  • 収益構造の変化:調剤基本料は引き上げられた一方、8〜27日分の内服薬の調剤管理料は引き下げられた。
  • 評価方法の変化:かかりつけ薬剤師の評価は、患者への具体的な介入やフォローアップを重視する方向へ再編された。
  • 経営上の分岐点:地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績をどこまで満たせるかが、2027年6月以降の収入に影響する。
  • 直近の課題:11月末の経過措置、後発品割合、マイナ保険証利用率、加算実績を確認する。
  • 最初の行動:自店の処方日数別の剤数分布と、実績項目の達成状況を可視化する。

1.なぜ、今回の改定では利益が増えにくいのか?

今回の診療報酬本体の改定率は、2026年度と2027年度の2年度平均で+3.09%です。

内訳は2026年度+2.41%、2027年度+3.77%とされています。

しかし、この数字がそのまま個々の薬局の増収率になるわけではありません。

調剤の政策改定分は+0.08%にとどまります。

また、物価上昇や賃金改善への対応も含まれています。

例えば、新設された調剤ベースアップ評価料は、職員の賃金改善に充てるためのものです。算定額が増えたからといって、その全額が経営上の利益になるわけではありません。

今回の改定を理解するためには、次の3つの視点が役立ちます。

① 底上げ

調剤基本料の引き上げ、調剤物価対応料、調剤ベースアップ評価料の新設など、薬局経営を下支えする仕組みです。

調剤基本料1は45点から47点へ、調剤基本料3ハは35点から37点へ引き上げられました。その他の通常区分も1点引き上げられ、特別調剤基本料A・Bは据え置きです。

② 立地依存の是正

特定の医療機関への処方箋集中や、医療機関との位置関係を評価に反映する仕組みです。

③ 実績評価への転換

残薬調整、処方変更、フォローアップ、在宅対応など、実際に行った薬学的業務の評価を重視する方向です。

中小薬局にとって重要なのは、これらの変化が一律に有利にも不利にも働くわけではないことです。

処方箋の構成、立地、薬剤師の業務実績によって、改定の影響が異なります。

2.中小薬局に影響する5つの変更点

① 調剤管理料の2区分化――処方日数が収益を左右する

内服薬の調剤管理料は、2026年6月から次の2区分になりました。

  • 27日分以下:10点
  • 28日分以上:60点

従来との比較は以下のとおりです。

処方日数

改定前

改定後

差

7日分

4点

10点

+6点

14日分

28点

10点

▲18点

21日分

50点

10点

▲40点

28日分

50点

60点

+10点

30日分以上

60点

60点

±0点

※内服薬1剤あたり。

【図1:処方日数別・調剤管理料の新旧比較】

2〜3週間処方の多い診療所に隣接する薬局では、影響が大きくなる可能性があります。

ここで必要なのは、処方箋枚数だけでなく、処方日数別の剤数分布を確認することです。

ただし、処方日数は患者の病態や治療方針に基づき医師が判断するものです。報酬上の理由だけで処方日数の変更を働きかけることは適切ではありません。

経営者が行うべきことは、現在の処方構成が経営に与える影響を正確に把握することです。


② 地域支援・医薬品供給対応体制加算――実績が来年度の収入を決める

地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算は、新たな地域支援・医薬品供給対応体制加算に統合されました。

区分

点数

主な対象

加算1

27点

基礎要件を満たす薬局

加算2

59点

調剤基本料1の薬局

加算3

67点

加算4

37点

基本料1以外の薬局

加算5

59点

加算1の基礎要件には、後発医薬品割合85%以上と安定供給体制が含まれます。

調剤基本料1を算定する薬局が加算2を取得するには、9つの実績項目のうち3項目以上を満たす必要があり、かかりつけ薬剤師の算定実績が必須です。

加算3では7項目以上が必要です。

また、基本料1以外の薬局が加算4を取得する場合は、かかりつけ薬剤師と個人宅への在宅対応が必須項目になります。

ここで経営者が注目すべきなのは、2027年6月以降の加算区分が、2026年5月から2027年4月までの実績によって決まるという点です。

2026年5月分については、改定前の重複投薬・相互作用等防止加算や、かかりつけ薬剤師指導料等の算定回数を一定の条件で読み替える取扱いも示されています。

過去の算定履歴を含めて、実績を確認する必要があります。

なお、2026年3月31日時点で後発医薬品調剤体制加算を届け出ていた薬局には、2027年5月31日まで後発品割合に関する経過措置があります。

供給停止品目に関する臨時的な計算上の取扱いも、2027年3月31日まで延長されています。

さらに、単品単価交渉の要件については、2026年11月末に期限を迎えるみなし措置があります。

今確認することは、後発品割合、9項目の実績累計、妥結率等報告書の単品単価交渉欄です。

 

③ かかりつけ薬剤師の再編――肩書きより実際の介入へ

かかりつけ薬剤師指導料と包括管理料は廃止され、服薬管理指導料の体系に再編されました。

新たに評価される主な業務は次の2つです。

  • かかりつけ薬剤師フォローアップ加算:50点、3月に1回
  • かかりつけ薬剤師訪問加算:230点、6月に1回

薬剤師個人の在籍要件は、当該薬局に継続して6か月以上となりました。

一方、薬局側には、常勤薬剤師の平均在籍期間1年以上、または管理薬剤師の在籍期間3年以上という要件が設けられています。

旧制度で届出を行っていた薬局については、この薬局側の要件に2026年11月30日まで経過措置があります。

また、フォローアップ加算の対象患者には、直近6か月間に所定の薬学的介入に係る報酬を算定した患者などが含まれます。

廃止された重複投薬・相互作用等防止加算の算定歴も、一定の条件で対象患者の判定に利用できます。

したがって、過去の算定履歴と現在の対象患者を照合することが重要です。


④ 残薬調整・有害事象防止――日常業務を成果として記録する

従来の重複投薬・相互作用等防止加算は廃止され、次の2つに再編されました。

調剤時残薬調整加算

残薬調整により、調剤日数を7日分以上変更した場合などを評価します。

薬学的有害事象等防止加算

残薬以外の理由で処方医に照会し、処方変更につながった場合などを評価します。

いずれも、在宅患者またはかかりつけ薬剤師の場合は50点、それ以外は30点です。

これらの業務は、加算2〜5の実績項目にも関係します。

例えば、残薬を確認して処方医に情報提供すること自体は、従来から薬剤師が行ってきた業務です。

しかし、実施した事実だけでは算定実績になりません。

対象患者、処方変更の内容、必要な記録、算定要件を確認し、業務の流れの中で適切に管理する必要があります。


⑤ 医療DXの評価一本化――3か月前の利用率が重要

医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算は廃止され、電子的調剤情報連携体制整備加算に一本化されました。

新たな加算は8点、患者1人につき月1回です。

要件には、算定月の3か月前のマイナ保険証利用率30%以上などが含まれます。

このため、利用率が基準を下回ってから対策を始めても、算定への反映には時間差が生じます。

自店の利用率を月次で確認し、算定に必要な水準を維持できているかを把握することが重要です。


補足|門前薬局と医療モールの立地評価

2026年6月から、一定の新規開設薬局を対象に「門前薬局等立地依存減算」(▲15点)が新設されました。

2026年5月31日時点で保険指定を受けている薬局は、当面の間、対象外です。

ただし、財政制度等審議会は既存薬局への適用拡大や薬局の総量規制にも言及しています。これは政策提言であり、決定事項ではありません。

また、医療モール内の医療機関の処方箋を合算する集中率の取扱いは、モール外にある薬局にも適用されます。

医療モール周辺の薬局では、自店の立地条件と集中率の計算方法を再確認する必要があります。


3.月1,000枚の薬局では、実際にいくら変わるのか?

ここからは、制度の影響を理解するためのモデル試算です。

実際の薬局の増減収を示すものではありません。

試算条件

  • 処方箋受付:月1,000回
  • 平均剤数:1.5剤
  • 月間剤数:1,500剤
  • 実患者数:月700人
  • 調剤基本料1を算定
  • 物価対応料:月500回算定
  • 1点=10円(患者負担を含む)

① まず、底上げ分を見る

項目

2026年6月〜

2027年6月〜

基本料・物価対応料による増収

約2.5万円

約3万円

ベースアップ評価料

約4万円

約8万円

ベースアップ評価料は賃金改善に充てるものであり、自由に使える利益とは区別して考える必要があります。

② 調剤管理料の減収を見る

8〜27日分の処方が、全剤数に占める割合によって、減収額は変わります。

ここでは14日分と21日分が半数ずつと仮定し、平均▲29点で試算します。

8〜27日分の剤の割合

月間剤数

月額影響

10%

150剤

▲約4.4万円

20%

300剤

▲約8.7万円

30%

450剤

▲約13万円

※28日分、7日分以下の増点分は含めていません。

このモデルでは、8〜27日分の剤が全体の1割を占めるだけでも、基本料と物価対応料による底上げ分を上回る減収になります。

ただし、これは特定の処方構成を仮定した試算です。実際には、28日分や7日分以下の剤数、旧加算の算定状況などによって結果が異なります。

③ 薬学的業務による取組分を見る

項目

月間件数の仮定

月額

調剤時残薬調整加算

15件

約4,500円

薬学的有害事象等防止加算

10件

約3,000円

かかりつけ薬剤師フォローアップ加算

10件

約5,000円

かかりつけ薬剤師訪問加算

1件

約2,300円

合計

約1.5万円

【図2:月1,000枚の薬局・増減収シミュレーション】

これらの取組分だけで調剤管理料の減収を補うことは、モデル上、容易ではありません。

しかし、これらの算定実績は、地域支援・医薬品供給対応体制加算の区分にも影響します。

例えば、加算1の27点と加算2の59点の差は32点です。

月1,000回の受付であれば、差額は月32万円、年間384万円となります。

もちろん、これは両区分の算定条件を満たし、すべての受付で算定できると仮定した単純計算です。旧制度からの純増収額ではありません。

また、加算取得に必要な人員、教育、業務管理のコストも考慮しなければなりません。

したがって、加算の取得件数だけでなく、取得するための業務負荷と費用も含めて判断することが重要です。

なお、医療DXの新加算についても、旧加算を算定していなかった薬局では月700人のモデルで約5.6万円の増収となる一方、旧10点区分を算定していた薬局では約1.4万円の減収となります。旧医療情報取得加算の廃止分は含まれていません。

4.2027年6月までに、経営者は何を決めるべきか?

2027年6月は、複数の制度変更と経過措置が重なる節目です。

準備を4段階に分けて整理します。

第1段階|2026年11〜12月:現状を把握する

まず、自店の数字を確認します。

  • 処方日数別の剤数分布
  • 後発医薬品割合
  • マイナ保険証利用率
  • 加算2〜5に必要な9項目の実績
  • かかりつけ薬剤師に関する施設基準
  • 妥結率等報告書の単品単価交渉欄

特に11月30日は、かかりつけ薬剤師に関する経過措置などの期限です。

旧・重複投薬加算の算定歴によってフォローアップ加算の対象となる患者についても、確認が必要です。

第2段階|2027年1〜3月:不足している実績を補う

後発品割合85%の安定的な維持を目指し、残薬確認やフォローアップの手順を整えます。

また、2027年6月のベースアップ評価料の引き上げに向けて、賃金改善計画を見直します。

2027年3月には、OTC類似薬に関する特別の料金の導入が予定されています。最終的な制度内容と施行時期は、正式な通知等で確認する必要があります。

第3段階|2027年4〜5月:取得区分を判断する

地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績集計は、2027年4月末で区切られます。

その時点で実績を確定し、6月以降にどの加算区分を取得するか判断します。

また、5月31日には後発品割合に関する経過措置が終了します。

5月20日には健康増進支援薬局の認定制度の施行が予定されています。

第4段階|2027年6月以降:新しい体制で運営する

2027年6月から、調剤物価対応料と調剤ベースアップ評価料が引き上げられます。

また、服用薬剤調整支援料2(1,000点)の算定が始まります。

この支援料2は、所定の老年薬学研修を修了したか、老年薬学認定薬剤師であるかかりつけ薬剤師が対象です。

必要な研修の受講予定や対象患者の見込みを確認し、自店で取り組むかどうかを判断します。

在宅医療に取り組む薬局では、2027年度の介護報酬改定の動向にも注意が必要です。

【図3:2027年6月までの経営ロードマップ】


5.今回の改定で言えること、まだ言えないこと

今回の制度変更から、少なくとも次の点は確認できます。

  • 調剤基本料の引き上げだけでは、薬局全体の増収を保証できません。
  • 処方日数の分布が収入に影響し、地域支援機能や薬学的介入の実績が、今後の加算区分に関係します。
  • 一方、個別薬局の正確な増減収額は、今回のモデル試算だけでは判断できません。
  • また、2028年度改定の具体的な内容も現時点では確定していません。

将来の制度変更を予測する際には、公表済みの制度、審議会の提言、今後の政策の可能性を分けて考える必要があります。

6.経営の名著から考える薬局戦略【筆者の私見】

今回の調剤報酬改定を読み解くと、単なる点数の引き上げ・引き下げでは説明できない変化が見えてきます。

調剤基本料は上がった。しかし、処方日数によっては調剤管理料が大きく下がる。

一方、残薬調整、処方変更、フォローアップなど、薬剤師が患者に働きかける業務の評価は再編されました。

そして、地域支援・医薬品供給対応体制加算では、薬局がどのような実績を積み上げてきたかが問われます。

私は、この変化を考えるうえで、3人の経営思想家の考え方が参考になると思います。

① ドラッカーに学ぶ――「何をしたか」ではなく「何を変えたか」

経営学者ピーター・ドラッカーは、組織の成果は組織の外部に存在するという考え方を示しました。

薬局に置き換えると、処方箋を何枚処理したか、薬剤師が何件服薬指導したかという数字は、あくまで業務の実績です。

本来問われるのは、その結果として患者にどのような変化が生まれたかではないでしょうか。

例えば、残薬を確認した結果、不要な薬が減った。副作用が疑われる症状を発見し、処方変更につながった。退院後の服薬状況を確認し、治療の継続を支援できた。

こうした成果こそ、薬局が地域に存在する価値だと考えます。

もちろん、今回の加算が患者アウトカムそのものを直接測定しているわけではありません。評価されるのは、所定の要件を満たした薬学的介入や算定実績です。

それでも、単なる処方箋処理から、患者への具体的な働きかけを重視する方向が見えます。

薬局の経営指標も、処方箋枚数だけでは不十分になる。

私は、残薬調整件数、処方変更につながった提案件数、フォローアップの実施状況などを、収益指標とともに確認する経営が必要だと考えます。

② ポーターに学ぶ――「すべての加算を取る」は戦略ではない

経営戦略論のマイケル・ポーターは、戦略における選択とトレードオフの重要性を説いています。

企業が競争優位を築くためには、何でも行うのではなく、他社とは異なる価値の提供方法を選び、それに適した活動を組み合わせる必要があります。

この考え方は、中小薬局の経営にそのまま応用できるのではないでしょうか。

例えば、地域支援・医薬品供給対応体制加算2は59点、加算3は67点です。

差は8点。

月1,000回の受付であれば、年間約96万円の差になります。

では、すべての中小薬局が加算3を目指すべきでしょうか。

私は、そうは考えません。

加算3の取得に必要な実績を満たすために、追加の人員配置や業務負荷が発生する場合、その費用と収益を比較する必要があります。

さらに重要なのは、その取組が自店の強みと一致しているかという点です。

在宅医療に強い薬局、特定疾患の薬物療法に詳しい薬剤師がいる薬局、地域の医療機関との連携に強みがある薬局では、優先すべき活動が異なるはずです。

ただし、加算3を目指さないことが、薬学的に必要な業務を省略する理由にはなりません。

患者に必要な業務は適切に実施したうえで、どの機能を重点的に強化し、どこに経営資源を投入するかを選択するのです。

加算点数の最大化と、薬局の経営価値の最大化は、必ずしも同じではありません。

中小薬局が大企業と同じ活動をすべて行う必要はありません。

自店の強みを活かし、地域で必要とされる機能を選び、磨き上げることこそ、経営戦略だと考えます。

③ ゴールドラットに学ぶ――薬局の成長を妨げている「制約」は何か

エリヤフ・ゴールドラットは、著書『ザ・ゴール』などを通じて、組織全体の成果を制限する要因、すなわち「制約」に着目する考え方を示しました。

薬局経営にも、さまざまな制約があります。

薬剤師が足りない。日々の調剤業務で手いっぱい。フォローアップをしたくても時間がない。処方医への情報提供はしているが、記録が十分に残っていない。

このような状況で、加算取得のために新しい業務を次々と追加すれば、現場の負担が増えるだけかもしれません。

重要なのは、業務を増やす前に、何が全体の成果を妨げているのかを見極めることです。

例えば、残薬確認が十分にできていない薬局があったとします。

原因は、薬剤師の人数不足でしょうか。

それとも、患者への確認項目が整理されていないこと、処方医への照会手順が複雑なこと、薬歴への記録に時間がかかることなのでしょうか。

もし問題が記録の仕組みにあるなら、薬剤師を増員する前に、業務フローを改善する余地があります。

一方、必要な薬学的判断を行う時間そのものが不足しているなら、単なる記録の効率化だけでは解決しません。人員配置や業務分担の見直しが必要になります。

私は、今回の改定に対応する中小薬局では、次の順番が重要だと考えます。

  1. 自店の実績を妨げている制約を特定する。
  2. 現在の人員と設備で改善できることを実行する。
  3. 業務手順や役割分担を見直す。
  4. それでも解決できない場合に、追加投資や増員を判断する。

薬剤師の時間は限られています。

その時間を、どの業務に使うのか。

私は、これこそ中小薬局の経営者が丁寧に考えるべき重要な課題だと思います。

3人の経営思想から見えてくること

ドラッカーは、何を成果とするのかを問いかけます。

ポーターは、その成果を生み出すために何を選ぶのかを問いかけます。

ゴールドラットは、選んだ戦略を実行するうえで何が障害になっているのかを問いかけます。

この3つを組み合わせると、今回の調剤報酬改定への対応は、単なる算定項目の追加ではなくなります。

患者に必要な価値を定め、自店の強みを選び、限られた経営資源を最も効果的に使う。

その結果として、薬学的業務の質が高まり、適切な算定実績が積み上がり、収益が確保されることを目指す。

私は、この順番が重要だと考えます。

制度が変わるたびに、点数の高い項目を追いかける経営から、自店が提供する価値を明確にし、それを持続可能な事業にする経営へ。

2026年度調剤報酬改定は、中小薬局にその転換を考えさせる機会なのではないでしょうか。

【図4:先人の知恵から考える中小薬局の経営戦略】

7.まとめ|来年6月までに必要な3つの条件

今回の調剤報酬改定で、中小薬局が押さえるべき条件は3つです。

第1に、処方日数別の剤数分布を把握すること。

基本料の引き上げだけを見ず、調剤管理料を含めた収益構造を確認する必要があります。

第2に、薬学的業務を適切に記録し、実績として管理すること。

残薬調整、処方変更、フォローアップなどの実績は、個別の加算だけでなく、地域支援機能の評価にも関係します。

第3に、取得する加算と、そのために必要な経営資源を選択すること。

人員、教育、業務負荷を考慮し、自店に合った加算区分を判断する必要があります。

処方箋の枚数だけではなく、患者に対してどのような価値を提供できるか。

その価値を、経営として持続可能な仕組みにできるか。

これが、今後の中小薬局に問われる課題ではないでしょうか。

11月末までの確認リスト

  • 処方日数別の剤数分布を集計し、改定前と比較する
  • 加算2〜5の実績項目を2026年5月から累計する
  • かかりつけ薬剤師の薬局要件を確認する
  • 旧加算の算定履歴とフォローアップ対象患者を確認する
  • 妥結率等報告書の単品単価交渉欄を確認する
  • 老年薬学研修の受講要否を判断する

まずは、自店の剤数分布とマイナ保険証利用率を1枚の表にしてみてください。

それが、2027年6月に向けた経営判断の出発点になります。

皆さんの薬局では、今回の改定でどの項目が最も経営に影響していますか。

ぜひコメントで教えてください。

次回は、2028年度改定で何が起こり得るのかを、確認済みの事実と政策上の可能性に分けて考えます。


参考資料

  1. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf
  2. 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」
    https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/000476242.pdf
  3. 日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和8年6月1日施行)」
    https://www.nichiyaku.or.jp/files/co/pharmacy-info/2026/20260513_01.pdf
  4. 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その1)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001678310.pdf
  5. 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その7)」
    https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/kankeitsuuchi/kankeitsuuchi_r08.files/gigi_r080529_1.pdf
  6. 厚生労働省「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」
    https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001753206.pdf
  7. 日本老年薬学会「老年薬学 服薬総合評価研修会」
    https://www.jsgp.or.jp/workshop/medication-assessment/
  8. 厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けたとりまとめ(案)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001750154.pdf
  9. 厚生労働省「健康増進支援薬局の認定制度等」
    https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001720341.pdf
  10. P・F・ドラッカー『現代の経営』(The Practice of Management)
  11. マイケル・E・ポーター「What Is Strategy?」Harvard Business Review, 1996
  12. エリヤフ・M・ゴールドラット、ジェフ・コックス『ザ・ゴール』(The Goal)

※経営思想に関する本文は、原著の逐語引用ではなく、各理論を薬局経営に応用した筆者の解釈です。

制度情報の基準日:2026年10月26日


👉【note版】:2026年度調剤報酬改定から考える、中小薬局の収益構造と生き残り戦略

<有料版:令和10年度(2028年度)調剤報酬改定 予測レポート>

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