退院支援カンファレンスに薬局が呼ばれない理由
――病院と地域をつなぐ仕組み
多職種から見た薬局|第1部・第5回

はじめに|退院後の問題は、退院前から始まっている
「退院してから薬が変わったようですが、何が変わったのか分かりません」。訪問看護師やケアマネジャーが退院後の生活を支える際、こうした情報不足が問題になることがあります。病院では治療が完了していても、自宅で薬を飲み続けられるとは限りません。
地域薬局が患者の退院を知るのは、退院後の処方箋が持ち込まれた時、という場合もあります。これまで本シリーズで扱った認知機能の変化、転倒・ふらつき、服薬困難は、退院前の情報共有によって予測・軽減できるものもあるでしょう。
ただし、「退院時カンファレンスに薬局が呼ばれないこと」と「必要な薬剤情報が薬局に届かないこと」は別の問題です。会議参加を目的化せず、患者・家族の治療と生活を途切れさせない連携を考えます。
1.薬局の退院時カンファレンス参加経験は7.8%
厚生労働省が2023年7月26日の中医協に提出した「調剤について(その1)」89ページによると、令和4年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査では、在宅対応のある薬局1,390施設のうち、退院時カンファレンスへの参加経験が「ある」は7.8%、「ない」は88.5%、無回答は3.7%でした。参加したことがない理由を尋ねた設問(n=1,262、複数回答)では、「医療機関から声がかからなかったから」が87.2%でした。調査の図表番号は資料の種類により異なるため、本稿では中医協資料の掲載ページを示します。
これは令和4年度の調査結果であり、2026年現在の全国の薬局の参加率を示すものではありません。「声がかからなかった」という回答が多いことは事実ですが、病院が薬局を呼ばない因果要因の全体像を明らかにしたものでもありません。会議以外の情報共有や薬学的支援は別に評価する必要があります。
2.なぜ病院は薬局を呼ばないのか
病院の退院支援担当者は、医師、訪問看護、ケアマネジャー、介護サービスなど多くの関係者を調整しています。そこに薬局を加えるには、退院後に患者が利用する薬局の把握、参加目的の明確化、日程調整が必要です。
考えられる障壁は四つあります。第一に、退院後の利用薬局が決まっていないこと。第二に、病院が薬局の対応機能を十分把握できていないこと。第三に、少人数薬局では会議への参加体制を確保しにくいこと。第四に、参加後の成果が病院側へ還元されていないことです。
ただし、これらは現場で検証すべき仮説であり、各要因の全国的な寄与度を実証した結果ではありません。病院だけに責任を求める解釈は避けるべきでしょう。

3.多職種が退院支援で必要とする情報
在宅医は治療方針と薬剤変更理由、訪問看護師は効果・副作用の観察項目、ケアマネジャーは服薬管理に必要な支援量、外来・かかりつけ医は退院後の処方継続方針、病院地域連携室は受け皿となるサービスと連絡先、介護職は日常生活で観察すべき事実、薬局薬剤師は薬剤照合と服薬支援に必要な情報を重視します。
介護職に薬剤の適否判断を求めるのではなく、観察した変化を専門職へ伝える仕組みが必要です。薬局だけを連携の中心に置く必要はありません。患者・家族の意向と生活を中心に、それぞれの専門性を接続することが重要です。
4.退院前に薬局が関与すると何が変わるか
架空事例です。80代の心不全患者が自宅に退院する予定で、入院中に利尿薬が調整され、服薬回数も変更されました。退院後は体力が落ち、娘が服薬を支援する予定です。
退院前に薬局が薬剤変更理由、入院前後の薬剤の差、観察が必要な症状、本人と家族の管理能力、供給上の問題を確認できれば、退院後の服薬方法を事前に検討できます。必要に応じて医師に処方の再評価を依頼し、看護師やケアマネジャーと役割を分担します。
ただし、会議参加だけで再入院を防げるとは断定できません。薬剤照合、患者指導、退院後フォローなど、具体的な介入内容とその実施状況が重要です。
5.全員が会議に参加する必要はない
退院時の情報連携は、会議だけではありません。厚生労働省の「令和4年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」保険薬局調査(患者の入退院についての医療機関との連携状況)によると、「患者の入退院について医療機関と連携している」と回答した295施設では、情報共有の方法として「お薬手帳による服用薬剤情報の共有」79.7%、「カンファレンスによらない病院薬剤師との連携による患者情報の共有」44.7%、「退院時カンファレンスへの参加による患者情報の共有」20.0%、「共通システムによる患者情報の共有」9.5%でした(複数回答)。これは入退院に関して連携している薬局に限った集計であり、全薬局の利用割合ではありません。
患者の状態が安定していれば文書共有で足りる場合もあります。一方、薬剤変更が複雑、服薬管理が難しい、在宅医療への移行に調整が必要といった場合には、個別連絡や共同検討が適しています。
本稿では、基本連携(文書)、強化連携(電話・安全な情報共有手段)、共同検討(多職種会議)の三段階を提案します。これは制度上の公式分類ではなく、患者の必要性に応じて選択・併用する実務上の整理です。

6.病院と薬局をつなぐ五つの仕組み
①入院時または退院支援開始時に、患者が希望する利用薬局を確認する。
②薬剤変更理由、注意すべき症状、服薬支援上の課題など必要情報を整理する。
③共同検討が必要な患者の判断基準を地域で協議する。
④参加が難しい薬局には事前相談や文書による意見提出など代替手段を用意する。
⑤退院後に薬局が確認した問題と対応結果を関係職種へ返す。
患者の同意、個人情報の適切な取扱い、情報の受領確認、緊急時の連絡先も運用設計に含める必要があります。情報を送ったことと、実際に支援に活用されたことは同義ではありません。

7.2026年度の退院時共同指導料をどう考えるか
2026年度の調剤報酬点数表では、区分15の4「退院時共同指導料」は600点です。
対象は入院中の患者で、退院後の訪問薬剤管理指導を担う保険薬局として患者が指定した薬局の保険薬剤師が、患者または家族等の同意を得て、入院医療機関の医師、看護師等、薬剤師など所定の職種と共同して在宅療養に必要な薬剤に関する指導等を行い、文書により情報提供した場合です。
原則として入院中1回、所定の疾病等の患者では2回まで算定できます。
厚生労働省の実施上の留意事項(保医発0305第6号、調剤点数表・2026年6月19日訂正後)では、原則として入院医療機関に赴くこととされる一方、ビデオ通話が可能な機器を用いた共同指導も算定可能です。
画面上で患者の個人情報を共有する場合は同意が必要で、医療情報システムと共通のネットワーク上の端末を使用する場合は安全管理ガイドラインへの対応が求められます。
薬剤服用歴等には指導の要点を記録し、患者・家族等に提供した文書の写しを添付します。
転院、社会福祉施設・介護老人保健施設・介護老人福祉施設への入所、死亡退院は対象外です。特別調剤基本料Bを算定する薬局も算定できません。
したがって、会議に参加しただけで算定できるわけではありません。
また、退院時共同指導料の対象とならない患者に対する通常の情報交換や退院後の服薬支援にも重要な役割があります。
薬局側の人件費・移動時間などを考慮すれば、600点という点数だけで採算性を判断することはできません。
8.薬局が今月から始められること
退院患者を受け付けた際、
②
入院前後の薬剤の違い、
②変更理由、
③
本人・家族の管理能力、
④
他職種と共有すべき薬学的問題、
⑤
⑤連絡先と連絡時期、
の五つを確認します。
さらに、連携先の病院と、どの患者で薬局への連絡が必要か、どの手段なら双方が無理なく運用できるかを協議します。一病院・数薬局の小規模な試行から、情報到達率、薬剤変更理由の把握率、薬剤関連問題の解決率、業務時間などを測定する方法が考えられます。
9.想定反論と研究上の限界
薬局を会議に呼べば時間と調整負担が増える、文書共有で足りる患者もいる、薬剤師の介入で再入院を確実に防げるとは限らない、という反論はいずれも重要です。会議の開催・参加は目的ではなく、患者ごとの薬学的課題に応じて選択する手段です。
退院移行期における薬剤師介入の研究では、薬剤関連問題の発見・解消や再入院に関する効果が検討されています。Shaverら(Journal
of the American Pharmacists Association、2019年)の後ろ向き診療録研究では、心血管関連の診断で退院した患者を対象に、退院後2〜7日以内の電話による服薬指導・薬剤照合、受診勧奨等を含むプログラムを評価しました。対象1,219件のうち780件がプログラムに参加し、439件は連絡不能または参加辞退でした。30日以内の全原因再入院率は参加群6.54%(51/780)、非参加群16.86%(74/439)、多変量調整後オッズ比は0.33(95%信頼区間0.22〜0.48)でした。しかし参加群と非参加群は無作為に割り付けられておらず、年齢などの背景にも差があります。交絡・選択バイアスを排除できないため、オッズ比をそのまま介入の因果効果や再入院リスクの減少率と解釈できません。また、複合介入の結果を退院時カンファレンス参加単独の効果と解釈することもできません。
また、Lussierらの系統的レビュー・メタ解析では、地域薬局薬剤師の退院移行期介入による30日以内再入院の相対リスクは0.72(95%信頼区間0.50〜1.02、I²=82%)で、主要解析の統計学的有意差は確認されませんでした。一部の解析では有意な低下が示されたものの、研究間の異質性と推定の不確実性が残ります。研究ごとの介入内容・対象・実施環境は異なります。したがって、会議参加率だけでなく、必要な薬剤情報の到達、問題の解決、患者・家族の負担、業務時間などを測定する必要があります。
10.私見|「呼ばれる薬局」から「必要とされる薬局」へ
私は、薬局が呼ばれない問題を病院側の認識不足だけで説明すべきではないと考えます。薬局自身も、退院支援で何を提供できるか、参加することで何が変わるかを具体的に示す必要があります。
すべての薬局が同じ機能を持つ必要はありません。高度な在宅医療に強い薬局も、日常の服薬継続を支える薬局もあります。重要なのは、地域の他職種が必要なときに相談でき、患者の生活に合った支援を実行できることです。
退院支援の目的は薬局の会議参加率を上げることではありません。病院から自宅へ移っても治療と生活が途切れないことです。「呼ばれること」ではなく「必要なときに頼られること」を目指したいと考えます。
参考資料
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厚生労働省「調剤について(その1)」(中医協 総-3、2023年7月26日、89ページ)https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001125226.pdf
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厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」保険薬局調査(患者の入退院についての医療機関との連携状況):https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001165880.pdf
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厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」調剤報酬点数表(告示第69号)https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665294.pdf
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厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」実施上の留意事項・調剤点数表(保医発0305第6号、6月19日訂正後)https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001713883.pdf
l Shaver A, et al. Impact of a community pharmacy
transitions-of-care program on 30-day readmission. Journal of the American
Pharmacists Association. 2019. PMID:30552052.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30552052/ 原著全文:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6684168/
l Lussier ME, Evans HJ, Wright EA, Gionfriddo MR. The
impact of community pharmacist involvement on transitions of care: A systematic
review and meta-analysis. Journal of the American Pharmacists Association.
2020;60(1):153–162.e5. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31427210/ 厚労省・2026年度改定資料一覧:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
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