4/15/2026

薬局の未来のために異業種に学ぶ① 現状の整理

 

薬局の未来のために異業種に学ぶ① 現状の整理

 薬局は小売業として考えた場合、海外や他の分野の小売業を参考にしてみましょう。

【小売業の栄枯盛衰:極論として考えるならば】

小売業で長く勝ち残る企業は、「安く売る会社」でも「店舗数が多い会社」でもなく、
(1)顧客が繰り返し戻る仕組み、

(2)粗利を守る仕組み、

(3)店舗を“単なる売場”ではなく物流・サービス拠点として使う仕組み、

(4)不採算事業を早く切る経営
を実践できています。

逆に縮小・破綻する企業は、売上減そのものよりも、価値提案の曖昧さ・デジタル対応の遅れ・過大な固定費・改革の遅さで沈みます。多くの薬局の現状は、縮小・破綻の状況にあると言えます。

 

① 小売業の「勝ち組」と「縮小・敗退組」の決定的な相違

まず結論だけ

〇 勝ち組は “来店の理由”が明確

✖ 敗退組は “何屋か分からなくなる”

 

比較マトリクス

観点

成長・存続企業

倒産・縮小企業

顧客への約束

「ここに行く理由」が一言で言える

品揃えも価格も体験も中途半端

収益構造

会費・PB・広告・物流など複線化

単純な売上依存、値引きに弱い

デジタル

ECと店舗を一体運用

ECを別物とみなし遅れる

店舗の役割

売場+受取+配送+相談拠点

ただの固定費の大きい売場

商品戦略

PB・SPA・絞った品揃え

仕入れ主導、差別化が弱い

出店戦略

ドミナント・収益性重視

惰性的な大型店維持

改革姿勢

不採算を早く切る

赤字事業を長く抱える

 

決定的な相違を7つに絞ると

第1に、反復収益の有無 <単純な“売ったら終わり”ではなく、顧客接点が継続収益になる設計>

第2に、粗利を守る仕組みの有無 <勝ち組は“売上”より“粗利の質”を重視し、逆に敗退組は、仕入れ商品を並べるだけで価格競争に巻き込まれやすい>

第3に、店舗の再定義 <勝ち組は、店舗を単にモノを売る場所としない、敗退組は店舗を“広い売場”のまま>

第4に、フォーマットの取捨選択 <勝ち組は誰に何を約束するかが狭く深い。敗退組は総花的で、専門店・EC・ディスカウントに三方向から敗北>

第5に、データとITの内製化・運用力 <デジタルは導入するだけでなく、“業務構造を変えること”実践できているか否か>

第6に、ポートフォリオの新陳代謝 <勝ち組は不採算店を切り、地域に合うフォーマットへの転換の意思決定が速い>

第7に、人時生産性の思想 <勝ち組は標準化・自動化・集中化で人を高付加価値業務へ常に検討>

 

② 成長・存続し続ける経営手法の体系化

私は、勝ち残る小売経営を5階層モデルで整理するのが最も実務的だと考えています。

第1層:顧客価値設計 <「なぜ顧客はこの店に行くのか」を一言で言えること>

第2層:利益エンジン設計 <単価や客数だけでなく、会費、PB、広告、3Pマーケットプレイス、物流サービス、サブスクなど、利益源を多層化する>

第3層:オペレーション設計 <基本思想に標準化、集中化、自動化、内製化>

第4層:店舗網・出店ポートフォリオ設計 <店舗数を増やすのではなく、地域支配力と役割分担を作ること>

第5層:撤退・再配分の経営 <“何をやらないか”、勝ち組は、旧来の成功体験に固執せず、店・商圏・事業・カテゴリーを捨てる判断基準を持ち早く決断し、敗退組は、その判断が遅い>

この5階層モデルを一言でまとめると、
「顧客価値 → 利益源 → 業務設計 → 店舗網 → 撤退判断」
の順で組み立てる会社が生き残る、ということです。

 経験の中でも、企業が“張りぼて化”し、企業全体で粉飾思考でかなり危険な状況に加速してしまいます。

 

③ これを薬局ビジネスに置き換えると、何が最良の生き残り策か

薬局業界で今起きている本質

薬局は今後、「処方箋を受けて薬を渡す業」だけでは住民にも国にも選ばれません。

厚労省は、オンライン資格確認、電子処方箋受入、薬歴電子化、電子処方箋管理サービスへの調剤結果登録、電子カルテ情報共有への対応などを求めています。さらに在宅では、供給、服薬支援、副作用モニタリング、残薬管理、医師・ケアマネとの連携、無菌調製まで含む“継続薬学管理”が期待されています。つまり、制度側がすでに薬局を「データ活用型・在宅連携型の医療インフラ」に変えようとしていることを前提にすべきです。

医療機関が制度に抗うことは意味があるのかもしれませんが、薬局は営利企業です。社会の潮流を先読みしなければビジネスとならないのは宿命です。また、政治への干渉力を持つことに意義を唱える方も見えますが、方向性の多様化もあり団結できていない団体には悪手でしかありません。

なので、薬局ビジネスの勝ち筋は、一般小売と同じく単純な店舗数競争ではなく、再来性・粗利構造・業務生産性・拠点機能化にあります。

アインの戦略は、アプリ・生成AI薬歴・在宅網・M&A、ウェルシアは調剤併設・地域適合・PB、ツルハは既存店利益改善・ドミナント・調剤拡大を打ち出しています。これは薬局業界でも、勝ち残るモデルがすでに“見えている”ことを意味しています。

 

★ 薬局経営の実務に落とすと、最優先でやるべきこと

第1優先は、処方箋依存からの脱却
収益源を、外来調剤だけでなく、在宅、施設、OTC、衛生材料、予防、会員アプリ、配送、健康相談へ広げる、一般小売での“利益源多層化”を、薬局で再現する発想です。

第2優先は、薬剤師の仕事を“作業”から“対人価値”へ移すこと
電子処方箋、薬歴DX、集中化、受け取り導線改善で単純作業を減らし、服薬支援、副作用モニタリング、処方提案、家族支援へ時間を振り向けることを薬剤師がすでにステップアップで実践できていること。

第3優先は、商圏ごとの役割分担
全店を同じ薬局にせず、専門外来型、在宅ハブ型、生活密着型、ドラッグ併設型など、地域に合わせたフォーマットに転換させること。

第4優先は、撤退基準の明文化
「地域医療のために必要だから残す店」と「惰性で残している店」を分けない企業は、弱体化は必須、一般小売の敗者の多くは、ここで判断を誤っている。

 

最終提言

薬局ビジネスの今後の生き残り策として最良なのは、
「調剤の受け皿」から「地域の継続医療・生活支援プラットフォーム」へ転換することです。

企業規模別に戦略を、大手はプラットフォーム化、中堅は地域ドミナント化、小規模は専門特化か超密着化、地方は生活インフラ化、再建企業は拡大ではなく再編として見据えることです。

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