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8/01/2026

令和8年熊本地震における薬局BCPは本当に進化したのか

令和8年熊本地震における薬局BCP機能検証

~「薬局BCPは進化した」のか、それとも「社会全体のBCPが進化した」のか~

令和8年7月に発生した熊本地震では、多くの薬局が被災しながらも、医薬品供給や地域医療の継続に向けた取り組みが迅速に行われました。

SNSや報道では「薬局BCPが以前より機能した」という評価も見受けられます。しかし、本当にそうだったのでしょうか。

2016年熊本地震から10年。今回の対応を検証すると、「制度や社会インフラは大きく進歩した一方で、個々の薬局のBCPには依然として課題が残る」という姿が浮かび上がります。


2016年から何が変わったのか

まず評価すべきは、行政・薬剤師会・関係機関の災害対応能力です。

発災直後には熊本県薬剤師会が県内約780薬局を対象にWebフォームによる被災状況調査を実施し、短時間で地域全体の状況把握を進めました。電話やFAXに依存していた2016年と比較すると、情報収集能力は大きく向上しています。

また、災害薬事コーディネーター制度も定着し、県庁や保健医療調整本部との連携が早期から機能しました。薬剤師が単独で対応する時代から、行政を含めた災害医療体制の一員として活動する仕組みへと発展したことは大きな進歩です。

さらに、医療DXの進展も見逃せません。

オンライン資格確認システムの災害時モードが迅速に適用され、患者が保険証やお薬手帳を持たない場合でも、本人確認により保険診療や薬剤情報の確認が可能となりました。

これは2016年には存在しなかった仕組みであり、今回の地震で最も大きな進歩の一つと言えるでしょう。


「薬局BCPが向上した」と言い切れない理由

一方で、ここで注意しなければならないのは、「制度の進歩」と「個々の薬局のBCP」を同一視してはいけないということです。

今回の地震では、停電や断水の影響により開局できなかった薬局が複数確認されました。

建物が無事でも、

・停電で分包機が動かない

・電子薬歴へアクセスできない

・断水で衛生管理が維持できない

・通信障害でオンライン資格確認が利用できない

という状況では、薬局は事業を継続できません。

BCPとは「計画書を作ること」ではなく、「災害時でも事業を継続できる能力」を意味します。

この視点で見ると、多くの薬局では依然としてライフラインへの依存度が高く、非常用電源や通信手段、水の確保など、基本的な備えが十分とは言えない実態が明らかになりました。


「BCP策定率」は本質ではない

災害が起こるたびに、「BCP策定率」が話題になります。

しかし、本当に重要なのは策定率ではありません。

計画書があっても、

・数年間更新していない

・職員が内容を知らない

・訓練を実施していない

・設備投資が伴っていない

のであれば、そのBCPは実際には機能しません。

逆に、正式なBCP文書がなくても、

・非常用電源

・通信手段

・地域医療機関との連絡体制

・医薬品卸との連携

・職員の役割分担

が整備され、実際に運用できる薬局は、災害対応能力が高いと言えます。

つまり、評価すべきは「BCPを作ったか」ではなく、「BCPが機能したか」です。


医薬品卸との連携も進歩した

今回、あまり注目されませんでしたが、医薬品卸の災害対応能力も大きく向上しています。

東日本大震災や2016年熊本地震では、

「薬はあるのに届かない」

という物流上の問題が多く発生しました。

現在では、

・広域物流拠点の整備

・優先配送ルート

・在庫情報の共有

・行政との連携体制

などが整備され、地域全体で医薬品供給を維持する仕組みが強化されています。

薬局単独のBCPではなく、卸・医療機関・行政を含めた地域医療全体のBCPが進化している点は高く評価すべきでしょう。


今後の薬局BCPに求められるもの

今回の熊本地震から見えてきた課題は明確です。

第一に、「電源」の確保です。

電子薬歴、分包機、レセコン、冷蔵庫など、多くの業務は電力なしでは成り立ちません。

第二に、「水」の確保です。

調剤だけでなく、衛生管理や感染対策にも不可欠です。

第三に、「通信」です。

クラウド型薬歴やオンライン資格確認が普及した現在では、通信手段の確保もBCPの重要項目です。

第四に、「人」です。

薬剤師自身が被災した場合、地域内で応援体制を構築できるかどうかが事業継続を左右します。

そして最後は、「地域連携」です。

薬局単独で災害に対応する時代は終わりました。

行政、薬剤師会、医薬品卸、病院、診療所、介護事業者などとの連携を前提としたBCPへと発想を転換する必要があります。


まとめ

令和8年熊本地震は、「薬局BCPが完成した」ことを示した地震ではありません。

むしろ、「社会全体の災害対応能力は大きく進歩したが、個々の薬局にはなお改善の余地がある」ことを明らかにした地震だったと言えるでしょう。

行政の初動、薬剤師会の情報収集、災害薬事コーディネーター制度、医療DX、オンライン資格確認など、社会インフラは2016年と比較して飛躍的に向上しました。

一方で、停電や断水などライフラインの途絶によって開局できない薬局が発生した事実は、「薬局自身の事業継続力」がまだ十分ではないことを示しています。

薬局経営者が目指すべきは、「BCPを作ること」ではありません。

災害時に患者へ医薬品を届け続けられる薬局になることです。

令和8年熊本地震は、そのための課題と方向性を改めて示した重要な事例であり、今後の薬局経営を考える上で貴重な教訓となるでしょう。


【私見的提案】

薬局の事業継続には、電気・水の確保は必須です。この点の改善が全くと言っていいほど対応できていない。地域に必要とされる災害時の衛生環境を提供できることは、地域医療インフラとしては非常に有用と思われます。

令和6年能登半島地震に伴う断水長期化などを教訓とし、被災直後における生活用水の代替水源として地下水の活用を推進すべく、地方自治体が災害用井戸・湧水の登録制度を運用する際の考え方などを整理しています。

「災害時地下水利用ガイドライン ~災害用井戸・湧水の活用に向けて~ 令和7年3月」

これらのことを受けて、防災井戸の設置をする事業体も増えてきています。薬局に防災井戸の設置をしてみませんか。

費用としては、防災用の井戸としては30万円くらいです(飲用としては、別途設備が必要)。

「災害に備えて、井戸を掘る際のメリットや費用は」


いざとなったときに頼られる薬局、いいと思います。


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